社会に出て25年、ずっとテクノロジーと現場の間を往き来してきました。インターネット黎明期から、EC、モバイル、そしてAI。時代が変わるたびに、確信が強まりました。技術は道具であり、本質は現場にある、と。
30年前に「よく訓練された執事のようなコンピュータ」を思い描いた人がいます。肝心なのは処理能力ではなく、共有の知識があって、それをその人の利益になるように使ってくれるかどうかだ、と書いていました。長らく比喩でしたが、その部分だけは、いま実際に作れるようになりました。
そして、時代の速度が人の育成を追い越しました。AIが人より速く学ぶ現実の中で、一つの問いが残ります。
人の処理量が一定であることを前提にした組織で、AI時代に挑むのか。
多くの組織は、次の前提で設計されてきました。
この前提は、産業化以降の100年以上、有効に機能してきました。いまも、多くの場面で機能しています。
AIは、上の三つのどれとも噛み合いません。処理量が桁で違い、並列に走らせても分業のボトルネックが出ず、そして指示に応答する主体であって、序列に従属する部下ではありません。
ヒエラルキーの中にAIを置くと、人間の処理速度が上限になります。AIを「いまの組織を効率化する道具」として扱うだけでは、出せる価値の一部しか出ません。
私たちの答えは、共有している知識の深さです。
汎用的に賢いAIは世界中にあります。ですが、あなたの事業を知っているAIは、あなたのところにしかありません。事業の文脈、判断の軸、現場の細部。それを渡し続けることで、短い指示が的確な行動に変わっていきます。
組織は、人数ではなく、事業文脈の深さで強くなる。小さくて深い組織のほうが、AIとは噛み合います。
東京ネット工務店は、「海老沢 + AI」の体制で事業を運営しています。この考えに沿って自社を組み直した結果です。
正直に書くと、これは整った制度として持っているものではありません。私が全部見ているから成立しているだけで、規模が小さいという事実に支えられています。人が増えた瞬間に効かなくなる種類のものです。安全な岸から書いているわけではない、ということだけ先にお伝えしておきます。
その上で、自社で回してみて分かったことを、お客様の事業に持ち込んでいます。
月額固定で、新規開発・改修・AIの組み込みを一貫して引き受けます。作って納めるのではなく、事業に合わせて動かし続けるほうが仕事の中身です。
お客様の判断の軸を蓄えて、意思決定を支えるAIです。社長が不在でも、その軸に沿った対応が続きます。使い続けるほど事業の文脈が深まり、短い指示が的確な行動に変わっていきます。
実務を動かすのは、その下にいるAIです。単独で動くこともあります。ここは、世の中でAIエージェントやAI社員と呼ばれているものと、やっていることは変わりません。違うのは、それを誰の判断軸で動かしているか、のほうです。
営業→コンサル→設計→開発という分業をしていません。お客様との対話から設計・開発・運用まで、海老沢が一貫して担当します。事業の文脈は、伝言の途中でいちばん落ちるからです。
現場で試して、うまくいかなければ考え直す。それを繰り返してきました。25年分の「うまくいかなかった形」が、そのまま設計の判断材料になっています。
共有している知識は、続けることでしか溜まりません。一度きりの取引では深まらない。だから継続開発という形を選んでいます。
作って終わりにせず、事業の変化に追いつかせ続けます。数年後にレガシーと呼ばれるものを作らないための、いちばん確実な方法がこれです。
お客様のデータをどこで処理するかは、内容によって分けています。外に出せないものは、外に出さない。どの処理がどこを通っているかは、お客様にお伝えできる状態にしています。
規模を追わず、目の前の事業を理解することを優先します。共有している知識の量が、そのまま仕事の質になるからです。
お客様の事業と、自分の事業。同じやり方を両方に当て続けることが、いちばん正直な検証だと思っています。
株式会社東京ネット工務店
代表取締役 海老沢敦