新しい道具が入るときは、いつも現場からです。パソコンのときも、クラウドのときもそうでした。誰かが勝手に使い始めて、後から会社が追いかける。今回もその順番で進んでいます。
ただ、今回の道具は少し違います。自分で判断するようになった。同じ指示でも、渡されたデータが違えば別の手順を選ぶ。それが利点で、同時に、作った本人にも次に何をするか分からない、ということでもあります。
そして、速い。これまで数日かかった仕組みが、数時間で形になります。困りごとが速く解ける。それは良いことです。
ただ、残るものも同じだけ増えます。
あなたの会社にも、意味の分からないルールや帳票が一つはあるはずです。誰が決めたか分からない。なぜその順番なのかも分からない。それでも毎月動いている。あれは、かつて誰かの正しい判断でした。困っていた人がいて、解決したから定着した。ただ、解決したという事実だけが残って、何を解決したのかは残らなかった。
判断は残ります。判断の前提は残りません。記録されるのは決定だけで、「当時こういう制約があったから、これが最善だった」は、決めた人の頭の中にしかないからです。
だから入れて終わりになりません。前提が変われば合わせ直す必要があるのに、前提を覚えている人がいなければ、合わせ直すこともできない。
大企業は、AIの専任者を置いて追いつこうとしています。置ける規模だからです。中小企業には置けません。
けれど、決めるのは一人で済みます。稟議も委員会も要りません。これは弱みではなく、条件です。
しかも、決めた理由を覚えているのも同じ一人です。大きな会社では、決めた人と覚えている人が数年で別々になる。小さい会社では、まだ一緒にいる。
日本の中小企業は、すでに回っています。何十年も続いてきた会社がこれだけある国は、そう多くありません。そこに新しい道具が乗ると、どうなるか。私が仕事にしているのは、そこです。
あなたの会社の事情を覚えていて、変わったら合わせ直す。その役を引き受けています。
覚えている、というのが仕事の中身です。何をどう作ったかではなく、なぜそうしたか。前提が変わったときに「あれはもう要らない」と言えるのは、なぜ作ったかを知っている側だけです。作った理由を知らない人には、捨てる判断ができません。増やすのは誰でもできて、減らすのが難しいのは、そのためです。
前例のない場所に仕組みを作る仕事を、25年やってきました。会社員だったのは足かけ6年、2社だけです。ただしその間ずっと、店舗の立ち上げか、新規事業の立ち上げか、新部門の立ち上げをやっていました。独立してからは、外注に出さず自分で開発しています。
毎回、新しい道具が来たときに現場にいた、というだけの経歴です。道具が変わるたびに、作り直してきました。
だから、いま起きていることが、前と同じ形に見えます。
経歴というのは、書く本人がいちばん都合よく書けるものなので、ここに書けることは多くありません。実際に何ができるかは、話してみて判断していただくほうが早いと思います。
かつて、事業の相談ができる参謀を置けたのは、規模のある会社だけでした。人を雇い、育て、抱えておける会社だけです。
いまは、そうではなくなりました。あなたの会社のことを覚えていて、判断の軸を共有している相手を、採用せずに持てる。
そして、新しい道具が入るときは、それまで決めていなかったことを、まとめて決め直せる機会でもあります。「AIをどう使うか」は社内で議題に載せやすい。そこに乗せて、ついでに古いほうも棚卸しできる。こういう機会は、そう何度も来ません。
日本の会社の大半は中小企業ですから、そこが一段上がったときに変わる景色は、けっこう大きいはずです。
その一段を上げる仕事をしています。