2026-10-01/株式会社東京ネット工務店 海老沢敦
① 何が終わったか
LVMH、Marc JacobsをG-IIIへ約5億ドルで売却完了
LVMH Moet Hennessy Louis Vuitton Inc.は2026年9月1日、傘下のMarc Jacobs Holdings, LLCの全保有ユニットをG-III Apparel Group, Ltd.へ売却する取引を完了した。G-IIIが2026年9月24日付でForm 8-K(米国上場企業の臨時報告書)により開示した。対価は約5億ドルで、G-IIIは手元資金とリボルビング信用枠(必要な都度借入・返済を繰り返せる融資枠)からの借入で資金化した。取引の枠組みは2026年5月14日付のUnit Purchase Agreement(持分譲渡契約)で合意されていた。G-III子会社とWHP Global関連会社の合弁事業MJ Topco, LLCがMarc Jacobs保有ユニットを取得した後、G-IIIが営業事業を取得し、知的財産はIPCo(知的財産保有会社)が保有し、G-IIIはライセンス契約に基づき事業を運営する。
全東信破産に続き、子会社の東信クレジットサービスも破産
株式会社東信クレジットサービス(大阪市中央区、代表・髙山萬保氏、資本金1万円、1998年5月設立)が2026年9月16日、大阪地裁から破産手続き開始決定を受けた。営業権は親会社の株式会社全東信に譲渡済みで、その全東信は2026年7月6日に破産している。負債総額は調査中。
コロナ無料PCR検査のメディトランセが破産、都の返還命令は2023年5月
検体輸送・PCR検査受託の株式会社メディトランセ(東京都新宿区、2011年7月設立)が2026年9月9日、東京地裁から破産手続き開始決定を受けた。東京都は2023年5月、同社が運営した新型コロナ無料PCR検査事業について、交付決定の取り消しと約13億円の返還命令を公表していた。交付決定取消額は約23億円。負債総額は調査中。
米Brightline、Chapter 11申請 負債約55億ドルを約27億ドルに圧縮へ
フロリダでマイアミオーランド間の高速鉄道を運営するBrightline Holdings LLCなど関連法人が2026年9月24日、米ニュージャージー州地区破産裁判所にChapter 11(米連邦破産法第11章、再建型の倒産手続き)を申請した。運営会社のBrightline Trains Florida LLCは申請対象に含まれず、列車の運行は従来どおり継続している。負債総額は約55億ドルで、再編後は約27億ドルに圧縮する計画。2026年15月の旅客数は約150万人(前年同期比16%増)だった。
Boston Scientific、サイバー攻撃で世界規模の製造・出荷が停止
Boston Scientific社(米マサチューセッツ州マールボロ)は2026年8月25日、社内システムへの不正な活動を特定し、8月26日にForm 8-Kで開示した。ネットワーク障害により製造システムや業務アプリケーションへのアクセスが遮断され、世界規模で製造・受注処理・出荷・流通網・滅菌施設の稼働に影響が生じた。9月8日提出(報告対象日9月7日)のForm 8-K(Item 1.05=重要なサイバーセキュリティ事案の開示項目)で、同社は2026年第3四半期および通期の業績に重要な影響が生じる可能性が高いこと、従来公表していた2026年通期業績見通しを達成できない可能性が高いことを開示した。決算発表は10月28日の予定。
Gyazo運営のHelpfeelで2,362万件の情報漏えい、削除済み画像のメタデータも対象に
Helpfeel社(京都)が運営する画像共有サービスGyazoで、2026年9月11日、第三者が画像アップロードサーバーの脆弱性を突いて不正アクセスした。同日夜に不審な挙動を検知し調査を開始した。9月16日の最初の発表でユーザー情報約2,362万件(うちメールアドレス登録ユーザー約562万件、匿名ユーザー約1,801万件)の流出を公表した。9月25日の続報で、ユーザーが削除済みの画像に関するメタデータ約1億7,400万件の流出も新たに判明したと公表した。画像メタデータは合計で約4億9,000万件(2019年1月以前アップロード分)に、削除済み分の約1億7,400万件(2023年2月以前に削除)が加わった。クレジットカード情報の漏えいは確認されていない。
メンバーズ、通期営業利益予想を25億円から2億円に下方修正
株式会社メンバーズは2026年9月30日、2026年5月14日に公表した2027年3月期第2四半期(中間期)および通期の連結業績予想を下方修正すると発表した。通期は売上収益268億66百万円から250億円(▲18億66百万円、▲6.9%)、営業利益は25億円から2億円(▲23億円、▲92.0%)、税引前利益は24億80百万円から2億円(▲22億80百万円、▲91.9%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は17億36百万円から1億50百万円(▲15億86百万円、▲91.4%)に修正した。中間期は営業利益3億20百万円の予想から▲4億30百万円の赤字に転じる。
朝日インテック、中期経営計画の最終年度目標を上方修正
朝日インテック株式会社は2026年8月14日、2025年8月14日に策定した中期経営計画「Building the Future 2030」の最終年度(2030年6月期)の数値目標と、長期ビジョンの数値目標を上方に見直すと発表した。最終年度の売上高目標は1,800億円から2,125億円、営業利益は504億円から680億円、営業利益率は28.0%から32.0%、ROE(自己資本利益率)は16.0%から20.0%、ROIC(投下資本利益率)は16.0%から19.0%に見直した。長期ビジョンの売上高目標は3,000億円から3,300億円、営業利益率は30.0%から33.0%に見直した。前提為替レートは米ドル143.00円から155.00円、ユーロ165.00円から179.00円などに変更した。
② 当時、それはどう見えていたか
LVMHとG-IIIについて、取引の枠組みは2026年5月14日付のUnit Purchase Agreementで既に合意されていた。ブランドの知的財産と運営事業を切り分け、IPCoとライセンス運用会社を分離したうえで運営事業だけを売却する構造は、契約締結時点から設計されていた。
東信クレジットサービスについて、親会社の全東信では2024年1月、名義偽装(他社になりすましての加盟店契約)に関わったとして東京支社営業本部長ら3名が逮捕され、同3月に法人としても書類送検されていた。帝国データバンクは、新型コロナ下の緊急事態宣言・まん延防止等重点措置で加盟の飲食店が時短・休業を余儀なくされ事業環境が悪化したことに加え、「コンプライアンス面での問題も発生し、信用不安が表面化するなか資金調達にも支障を来した」と破産理由を記している。
メディトランセについて、東京都は2023年5月、交付決定の取り消しと約13億円の返還命令を公表していた。帝国データバンクによると、その公表後も複数の自治体から同様の返還請求を受けていたという。破産手続き開始決定は2026年9月9日で、都の公表から数年の間があった。
Brightlineについて、申請前の2026年9月23日時点で、Wall Street Journalが「Chapter 11申請が近い」と報じていた。会社は「旅客収入と付帯収益が運営費と債務利息をカバーできていない」状況にあった。
Boston Scientificについて、8月26日提出の当初のForm 8-Kでは不正活動の発覚とネットワーク遮断のみが開示されていた。財務影響が「重要」との判断は9月8日提出の続報8-Kで示された。侵入経路や攻撃手法の詳細、進行中の不正アクセスの有無について、同社は「現時点で継続的な不正アクセスの痕跡は確認していない」とのみ述べている。攻撃主体や手口は確認されていない。
Helpfeelについて、9月16日の初回発表ではユーザー情報約2,362万件の流出のみが公表されていた。削除済み画像のメタデータ約1億7,400万件は9月25日の続報で新たに判明した内容で、初回発表時点では確認されていなかった。
メンバーズについて、前回予想は2026年5月14日公表。会社の説明によれば、第1四半期決算発表時点では、生成AIの発展による定型的な実行工程への人材ニーズ減少などの外部環境要因の影響を、AX(AIトランスフォーメーション)サービスの開発加速で挽回できると見込んでいた。第1四半期の全体稼働率は74.2%(前年同期比▲1.9pt)だった。上半期中にその相殺には至らなかった。
朝日インテックについて、前の中期経営計画「ASAHI Going Beyond 1000」(2021年7月からの5カ年、2026年6月期に連結売上高1,100億円・営業利益率23~25%が目標)は、2025年6月期決算短信(2025年8月14日公表)で「当初の計画より1年前倒しで目標を達成することができました」と記載され、同日「Building the Future 2030」が新たに策定された。今回の見直しは、新計画の策定からちょうど1年後に出された。
③ 構造として残るもの
メディトランセでは、東京都による交付決定の取り消しと返還命令の公表(2023年5月)から、事業を続けられなくなる法的整理(2026年9月9日の破産手続き開始決定)まで数年の間があった。帝国データバンクによれば、その間に複数の自治体から同様の返還請求を受けていたという。
緊急時の補助金は、交付が先に行われ、要件審査や返還命令はあとから確定する制度になっている。行政処分が公表された時点と、それが実際に資金繰りや事業継続を断つ時点は一致しない。
読者の会社がものづくり補助金・IT導入補助金・雇用関連の助成金などを受けている場合、交付決定の際に付された条件(事業実施期間中の要件維持、財産処分制限期間、実績報告の内容)がどこまで継続して適用されるか、返還を求められる条件は何かを、交付元の窓口に確認できる。行政処分を受けたことの有無とは別に、確認しておける事柄になる。