CoBANTO3-AI

創刊準備号 Vol.46 / アクセンチュアが「AIの受注額を出すのは今回で最後」——11,000件やって、特別な仕事ではなくなった

いま出入りしている開発会社は、AIエージェントの案件をやったことがありますか。

2026年09月06日 一般公開

① 事実

アクセンチュアは、AIの受注額を別に出すのをやめました

2025年12月18日、アクセンチュアの2026年度第1四半期決算説明会。会長兼最高経営責任者の Julie Sweet が、こう述べています。

「これが、この指標を公表する最後の四半期になります」

対象は同社が「advanced AI」と呼んでいるものです。定義は生成AI、AIエージェント(人が逐一指示しなくても自分で手順を判断して動くAI)、フィジカルAI(ロボットなど、物を動かす機械に載るAI)の3つ。データ分析、従来型のAI、RPA(決まった画面操作をソフトに繰り返させる自動化)は含みません。

この金額を測り始めたのは2023年度の第3四半期です。生成AIが世に出た数か月後で、業界で最初にこの数字を公表したのは自社だと同社は述べています。

やめる理由も、その場で述べられています。

「AIへの需要は本物で、急速に成熟しています。advanced AI が、当社のほぼ全ての仕事に何らかの形で埋め込まれる地点に、いま到達しました。そして多くの顧客が、単発の実証実験や個別の取り組みから先へ進もうとしています」

「複数の形のAIを統合した、規模の大きい一気通貫の解決策へと移っています。advanced AI だけを切り出したデータには、意味が薄くなりました」
タグ=決算, 雇用

測り終えた時点で、アクセンチュアの累計は11,000プロジェクトでした

同じ説明会で、測り始めからの累計が公表されています。受注額115億ドル、プロジェクト数11,000件、売上48億ドル。

直前の四半期だけを見ると、受注額22億ドル、売上約11億ドル。受注額は前年同期のほぼ2倍で、その前の四半期も上回っています。伸びている最中に、別に出すのをやめた形です。

発注する側では、4分の3が「2年以内にAIエージェントを入れる」と答えています

デロイトが2025年8月から9月にかけて、24か国のディレクターから経営層3,235人に訊いた調査があります。回答者は、自社のAIの取り組みに直接関わっている人たちです。

AIエージェントを2年以内に導入する予定だと答えたのは、約4分の3。 そのうち、統治の型(誰が何をどこまで承認してよいかの決まり)が成熟していると答えたのは21%でした。

実証実験のうち4割以上を本番の業務に移せたと答えた企業は25%。ただし54%が「今後3か月から6か月でそこに到達する」と答えています。

OpenAIは、19社と組んで導入専門の会社を作りました

2026年5月11日、OpenAIが OpenAI Deployment Company の設立を公表しました。初期投資は40億ドル超。OpenAIが過半を保有し、支配します。

この会社が置くのは、FDE(フォワード・デプロイド・エンジニア=モデルを作った側の技術者が、顧客の社内に入って構築まで受け持つ職種)です。

OpenAIの説明では、FDEは経営層と現場の両方と組み、どこにAIが効くかを見つけます。そのうえで、業務の進め方をAIの周りに作り直します。

同時に、Tomoro というAI導入の技術会社を買収すると発表しました。FDEと導入の専門家、約150人が初日から加わります。 英国の小売大手テスコ、航空会社のヴァージン・アトランティック、ゲーム会社のスーパーセル。基幹業務での実績が挙げられています。

組んだ相手は19社です。主導するのは投資会社のTPGで、アドベント、ベインキャピタル、ブルックフィールドが共同で主導しています。

出資者には、ベイン・アンド・カンパニー、キャップジェミニ、マッキンゼー・アンド・カンパニーが入っています。 コンサルティング会社とシステム構築の会社です。

OpenAIは、この出資者たちが世界で2,000社を超える企業に出資していると書いています。

Anthropicは、大企業はSIer経由だと書いています

2026年5月4日、Anthropicがブラックストーン、ヘルマン・アンド・フリードマン、ゴールドマン・サックスと新会社を作ると公表しました。ほかに、ジェネラル・アトランティック、レナード・グリーン、アポロ、セコイアなどの投資会社が出資しています。

対象は「地域の銀行から、中堅の製造業、地域の医療システムまで」と書かれています。 Anthropicの応用AIエンジニアが、新会社のエンジニアと一緒に顧客の中に入る形です。

最高財務責任者の Krishna Rao の発言が併記されています。

「Claudeへの企業からの需要は、単一の提供形態では到底追いつかない速さで伸びています。世界の主要なシステムインテグレーターとの提携が、Claudeが大企業に届くうえでの中心です。この新しい会社は、その仕組み全体に追加の実行能力をもたらします」

顧客の中に人を置く形を最初にやったのは、Palantirです

この形の元祖はPalantirです。2026年第2四半期、同社の米国商用部門の売上は7.64億ドルで、前年同期から149%増えました。米国商用の契約総額は21.32億ドル、153%増です。


② 構造

産業になるには、順番があります

新しい技術が産業になるとき、通る順番があります。できるかどうか。誰がやるか。どう選ぶか。誰が責任を持つか。 この4つです。

ここまでに並べた数字を、この順番に当てはめてみます。

アクセンチュアがやめたのは、AIが独立した項目でなくなったからです

同社は理由を書いています。ほぼ全ての仕事に埋め込まれた、と。

別掲するというのは、それが特別な仕事だという意味です。 特別だから、いくら受注したかを数えて外に出す。数えるのをやめた時点で、普通の仕事になっています。

システム開発の受注額を「うちは今期これだけ受けました」と切り出して公表する会社は、いまありません。あまりに当たり前だからです。 アクセンチュアの11,000件は、AIがその位置に着いた件数だと読めます。

デロイトの調査も、同じ方向を指しています。4分の3が2年以内に入れると答えているものは、もう新技術ではありません。 一部の先進的な会社が試すものなら、この数字にはなりません。

発注する側は、4番目でまだ止まっています

ここまでで、3つ目までは通っています。できるかどうかは済みました。誰がやるかも決まりつつあります。どう選ぶかも、デロイトの調査では回答企業の77%が調達先の国まで見ていると答えました。選定の基準ができています。

残っているのは4つ目です。 誰が責任を持つか。デロイトの数字では21%でした。

システム開発では、ここに契約の型があります。検収の条件、瑕疵の扱い、誰がどこまで直すか。その型ができたのは、たくさん揉めたあとです。 AIエージェントの側には、まだそれがありません。入れると答えた4分の3のうち、5社に4社が、決まりのないまま入れようとしていることになります。

中核の奪い合いは、起きていません

ここで、誰がその仕事を受けるのかを見ます。候補は3つありました。システムインテグレーター(複数の製品を組み合わせて情報システムを作り上げる会社)か、コンサルティング会社か、モデルを作った側か。

OpenAIの出資者名簿が、答えになっています。マッキンゼー、ベイン・アンド・カンパニー、キャップジェミニ。コンサルティング会社とシステム構築の会社が、モデルを作った側が過半を持つ会社に、出資者として入りました。

奪い合っている形には見えません。上流が場所を作り、既存のプレイヤーが資本で参加した形だと読めます。

Anthropicの側は、経路をはっきり分けて書いています。大企業に届く中心はシステムインテグレーターとの提携で、その外側に、中堅企業向けの会社を別に作っています。同じ会社が、規模によって違う経路を使い分けています。

システム開発は、分業ができてから産業になりました

かつては、機械を作った会社が売り、それを組む会社が別にいて、業務をどう変えるかを設計する会社がまた別にいました。分業ができたから、発注できるようになりました。 誰に何を頼めばいいかが、決まったからです。

いま起きているのは、その逆の順番に見えます。分業ができる前に、モデルを作った側が全部の階層に手を伸ばしました。 40億ドルを積んで、顧客の中に人を置く会社を自分で持つ。買った150人は、他社で同じことをやっていた人たちです。

Palantirの米国商用部門が1年で149%伸びたのは、この形に値段が付いていることを示しています。顧客の中に技術者を置くやり方は、商売として成立しています。

名指しされているのは、中堅までです

規模で並べ直すと、線が見えます。

大企業には、システムインテグレーター経由で届きます。 Anthropicがそう書いています。

中堅企業には、専用の会社が作られました。 地域の銀行、中堅の製造業、地域の医療。Anthropicの文面に出てくる具体名です。

その下は、まだどこにも書かれていません。 OpenAIの側も、出資者が出資している2,000社という書き方をしています。投資ファンドが持っている会社ですから、相応の規模です。


③ 自分事

当社の顧客のソフトウェアは、ほとんどでAIが動いています

AIエージェント開発は、もう普通の仕事です。当社の場合も同じで、顧客に納めているソフトウェアのほとんどで、なんらかの形でAIが動いています。

当社は受託や委任でソフトウェアを作っています。顧客の会社に入り、業務の流れを聞き、どこを機械にやらせるかを決めて、作って、動かし続けます。何を作るかを決めるところから、一緒に入ります。

OpenAIがFDEの仕事として書いている内容は、この形とほとんど同じです。経営層と現場の両方と話し、どこに効くかを見つけ、業務の流れをその周りに作り直す。当社は2007年から、この形でやっています。 AIが出てくる前からです。

小さな受託が昔からやってきた形に、名前が付いて、40億ドルが付きました。

数十人の会社に、OpenAIのFDEは来ません

規模で分けて書きます。

数十人の会社の場合。部門があり、業務の流れが人をまたいでいます。承認の順番があり、様式があり、締めの日があります。AIエージェントを入れるというのは、その順番を変えることです。OpenAIのFDEがやっている仕事の対象そのものですが、単価が合いません。 OpenAIが人を置く相手は、投資ファンドが出資している規模の会社です。

数人の会社も同じで、名簿のどこにも載っていません。

規模が小さいほど、AIエージェントは組み込みやすくなります

ここは、来ないという話で終わりません。

数人の会社では、社長が全部を見ています。承認の順番は、社長が見るか見ないかの1段だけです。決めてから動かすまでが、短くて済みます。

数十人の会社でも、大企業に比べれば段は少なく済みます。部門をまたぐ承認の設計から始める話になりません。

大企業がFDEに40億ドルを払って作り直そうとしているのは、その順番です。順番が少ない会社は、その工事が要りません。

どちらの規模でも、着手する人は同じところに来ます。まず白羽の矢が立つのは、いま出入りしている外部の人です。 顧問の税理士や、いま使っている業務ソフトの担当や、たまに来る開発会社。

統治の型を、こちらから訊いていい理由があります

デロイトの21%を、もう一度置きます。入れると答えた企業の5社に4社が、決まりのないまま入れようとしています。

これは大企業の数字です。数十人の会社では、決まりはもっとありません。そして、決まりが無いことは、入れてから分かります。

AIエージェントは、人が一手ずつ指示しなくても動きます。動いた結果が間違っていたとき、誰が気づく仕組みになっているか。 発注する前に訊けることです。

明日できること

いま出入りしている開発会社やシステム会社に、AIエージェントの案件をやったことがあるか訊いてください。 決裁は要りません。訊くだけです。

そのとき、断り方を見てください。 「まだやっていません」と「うちではやりません」は、別のことを言っています。前者は、頼めば一緒に覚える相手です。

やったことがあると答えたら、どんな提案を持ってくるかを見てください。 その提案で、その会社のAIの理解のレベルが分かります。

もう一つ。いま使っている業務ソフトの提供元に、エージェントの機能を入れる予定があるか確かめてください。

入るなら、どの操作を機械が自分で判断してよいことにするかは、設定の画面で決まります。その画面を誰が見るのかは、いま決めておけます。


今月のモデル

新しいAIが出るたびに、点数が並びます。ですが、点数と、自社の仕事で使えるかどうかは、別です。

今号:GPT-6 Astra(OpenAI/2026年9月5日)

前号で「まだ出てきません」と書いたモデルです。今日、API(自社で作ったソフトウェアからAIを使うための提供方法)で出てきたので、CoBANTO3-AIに追加して、そのまま話してみました。

値段は、出力100万トークン(AIが文章を扱う単位。料金はこれで数えます)あたり50ドル。Claude Fable 5.1と同額で、Gemini 3.8 Flashの3.75ドルとは13倍の開きです。

触った感触は、速さです。返事までが短いので、こちらも「そこは違う」と細かく返せます。答えの長さも、こちらから短く指示したときのような詰め込んだ感じがありません。

考える量の設定を、中から高に上げてみました。答えに出てこない分(モデルが答えを組み立てる途中で使う量)を含めて、3.7倍になります。 会話では中で足りていたので、上げる理由が見つかりませんでした。


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本紙のバックナンバーを記憶し、本紙の読み方(戦略の階層・歴史循環)で、あなたの状況に当てて答えるAIチャットです。記事は「地図」ですが、地図は現地には当たりません。「この号の話、うちの場合はどうなるのか」を訊く場所として用意しました。

調べもの、文章の下書き、ちょっとした雑談にも使えます。 普段づかいのチャットとして、気軽にどうぞ。

2026年9月5日現在で、約20のモデルに対応しています。 新しいモデルも、出たらなるべく早く入れています。モデルの手応えを試す場所としても使えます。

ご利用は事前購入のクレジット制です(1,000円から)。月額の契約ではないので、解約の手続きはありません。使った分だけ減り、無くなれば止まります。

消費は、<strong>基本料金と、答えの長さ(100字ごとに1クレジット)</strong>で決まります。短い答えなら少なく、長い答えほど多くかかります。モデルによって、1,000円で120〜200往復ほど使えます。

読者登録をいただいた方には、無料クレジットを500クレジット、プレゼントします。 登録は、この記事のすぐ下からできます。

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https://www.netkomuten.tokyo/lp/co-banto3-ai


ライトノベル「ようこそ、東京ネット工務店へ」

海老沢が執筆している、IT業界のお仕事小説です。毎号1話ずつご紹介します。

今号の話:〈第二部 第35章「責めない」〉

顧客が20年ためた30万件が、本番から消えた翌朝です。誰かが、同僚を責めはじめます。

https://www.netkomuten.tokyo/channels/novel-tnk-part2/articles/ch35

小説を書いている理由

この小説は、もともと、社内の教育のために書き始めました。うちの会社——東京ネット工務店で、新しく入った人間に、この仕事の考え方を伝えるための、いわば教材でした。戦略の階層とか、取捨選択とか、口で言っても、なかなか伝わりません。だったら、物語にして読んでもらったほうが早い。そう思って、書き始めました。

ところが、いろいろあって、その教材が、要らなくなってしまいました。理由は、いろいろあります。ここには、書ききれません。ただ、宙に浮いてしまった原稿を、捨てるのも惜しくて、何度も書き直しながら、今度は、教材ではなく、ただ読んで面白い、お仕事小説として、作り直していきました。

https://www.netkomuten.tokyo/channels/atogaki/articles/atogaki-1


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