① 事実
アクセンチュアは、AIの受注額を別に出すのをやめました
2025年12月18日、アクセンチュアの2026年度第1四半期決算説明会。会長兼最高経営責任者の Julie Sweet が、こう述べています。
「これが、この指標を公表する最後の四半期になります」
対象は同社が「advanced AI」と呼んでいるものです。定義は生成AI、AIエージェント(人が逐一指示しなくても自分で手順を判断して動くAI)、フィジカルAI(ロボットなど、物を動かす機械に載るAI)の3つ。データ分析、従来型のAI、RPA(決まった画面操作をソフトに繰り返させる自動化)は含みません。
この金額を測り始めたのは2023年度の第3四半期です。生成AIが世に出た数か月後で、業界で最初にこの数字を公表したのは自社だと同社は述べています。
やめる理由も、その場で述べられています。
「AIへの需要は本物で、急速に成熟しています。advanced AI が、当社のほぼ全ての仕事に何らかの形で埋め込まれる地点に、いま到達しました。そして多くの顧客が、単発の実証実験や個別の取り組みから先へ進もうとしています」
「複数の形のAIを統合した、規模の大きい一気通貫の解決策へと移っています。advanced AI だけを切り出したデータには、意味が薄くなりました」
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測り終えた時点で、アクセンチュアの累計は11,000プロジェクトでした
同じ説明会で、測り始めからの累計が公表されています。受注額115億ドル、プロジェクト数11,000件、売上48億ドル。
直前の四半期だけを見ると、受注額22億ドル、売上約11億ドル。受注額は前年同期のほぼ2倍で、その前の四半期も上回っています。伸びている最中に、別に出すのをやめた形です。
発注する側では、4分の3が「2年以内にAIエージェントを入れる」と答えています
デロイトが2025年8月から9月にかけて、24か国のディレクターから経営層3,235人に訊いた調査があります。回答者は、自社のAIの取り組みに直接関わっている人たちです。
AIエージェントを2年以内に導入する予定だと答えたのは、約4分の3。 そのうち、統治の型(誰が何をどこまで承認してよいかの決まり)が成熟していると答えたのは21%でした。
実証実験のうち4割以上を本番の業務に移せたと答えた企業は25%。ただし54%が「今後3か月から6か月でそこに到達する」と答えています。
OpenAIは、19社と組んで導入専門の会社を作りました
2026年5月11日、OpenAIが OpenAI Deployment Company の設立を公表しました。初期投資は40億ドル超。OpenAIが過半を保有し、支配します。
この会社が置くのは、FDE(フォワード・デプロイド・エンジニア=モデルを作った側の技術者が、顧客の社内に入って構築まで受け持つ職種)です。
OpenAIの説明では、FDEは経営層と現場の両方と組み、どこにAIが効くかを見つけます。そのうえで、業務の進め方をAIの周りに作り直します。
同時に、Tomoro というAI導入の技術会社を買収すると発表しました。FDEと導入の専門家、約150人が初日から加わります。 英国の小売大手テスコ、航空会社のヴァージン・アトランティック、ゲーム会社のスーパーセル。基幹業務での実績が挙げられています。
組んだ相手は19社です。主導するのは投資会社のTPGで、アドベント、ベインキャピタル、ブルックフィールドが共同で主導しています。
出資者には、ベイン・アンド・カンパニー、キャップジェミニ、マッキンゼー・アンド・カンパニーが入っています。 コンサルティング会社とシステム構築の会社です。
OpenAIは、この出資者たちが世界で2,000社を超える企業に出資していると書いています。
Anthropicは、大企業はSIer経由だと書いています
2026年5月4日、Anthropicがブラックストーン、ヘルマン・アンド・フリードマン、ゴールドマン・サックスと新会社を作ると公表しました。ほかに、ジェネラル・アトランティック、レナード・グリーン、アポロ、セコイアなどの投資会社が出資しています。
対象は「地域の銀行から、中堅の製造業、地域の医療システムまで」と書かれています。 Anthropicの応用AIエンジニアが、新会社のエンジニアと一緒に顧客の中に入る形です。
最高財務責任者の Krishna Rao の発言が併記されています。
「Claudeへの企業からの需要は、単一の提供形態では到底追いつかない速さで伸びています。世界の主要なシステムインテグレーターとの提携が、Claudeが大企業に届くうえでの中心です。この新しい会社は、その仕組み全体に追加の実行能力をもたらします」
顧客の中に人を置く形を最初にやったのは、Palantirです
この形の元祖はPalantirです。2026年第2四半期、同社の米国商用部門の売上は7.64億ドルで、前年同期から149%増えました。米国商用の契約総額は21.32億ドル、153%増です。
② 構造
産業になるには、順番があります
新しい技術が産業になるとき、通る順番があります。できるかどうか。誰がやるか。どう選ぶか。誰が責任を持つか。 この4つです。
ここまでに並べた数字を、この順番に当てはめてみます。
アクセンチュアがやめたのは、AIが独立した項目でなくなったからです
同社は理由を書いています。ほぼ全ての仕事に埋め込まれた、と。
別掲するというのは、それが特別な仕事だという意味です。 特別だから、いくら受注したかを数えて外に出す。数えるのをやめた時点で、普通の仕事になっています。
システム開発の受注額を「うちは今期これだけ受けました」と切り出して公表する会社は、いまありません。あまりに当たり前だからです。 アクセンチュアの11,000件は、AIがその位置に着いた件数だと読めます。
デロイトの調査も、同じ方向を指しています。4分の3が2年以内に入れると答えているものは、もう新技術ではありません。 一部の先進的な会社が試すものなら、この数字にはなりません。
発注する側は、4番目でまだ止まっています
ここまでで、3つ目までは通っています。できるかどうかは済みました。誰がやるかも決まりつつあります。どう選ぶかも、デロイトの調査では回答企業の77%が調達先の国まで見ていると答えました。選定の基準ができています。
残っているのは4つ目です。 誰が責任を持つか。デロイトの数字では21%でした。
システム開発では、ここに契約の型があります。検収の条件、瑕疵の扱い、誰がどこまで直すか。その型ができたのは、たくさん揉めたあとです。 AIエージェントの側には、まだそれがありません。入れると答えた4分の3のうち、5社に4社が、決まりのないまま入れようとしていることになります。
中核の奪い合いは、起きていません
ここで、誰がその仕事を受けるのかを見ます。候補は3つありました。システムインテグレーター(複数の製品を組み合わせて情報システムを作り上げる会社)か、コンサルティング会社か、モデルを作った側か。
OpenAIの出資者名簿が、答えになっています。マッキンゼー、ベイン・アンド・カンパニー、キャップジェミニ。コンサルティング会社とシステム構築の会社が、モデルを作った側が過半を持つ会社に、出資者として入りました。
奪い合っている形には見えません。上流が場所を作り、既存のプレイヤーが資本で参加した形だと読めます。
Anthropicの側は、経路をはっきり分けて書いています。大企業に届く中心はシステムインテグレーターとの提携で、その外側に、中堅企業向けの会社を別に作っています。同じ会社が、規模によって違う経路を使い分けています。
システム開発は、分業ができてから産業になりました
かつては、機械を作った会社が売り、それを組む会社が別にいて、業務をどう変えるかを設計する会社がまた別にいました。分業ができたから、発注できるようになりました。 誰に何を頼めばいいかが、決まったからです。
いま起きているのは、その逆の順番に見えます。分業ができる前に、モデルを作った側が全部の階層に手を伸ばしました。 40億ドルを積んで、顧客の中に人を置く会社を自分で持つ。買った150人は、他社で同じことをやっていた人たちです。
Palantirの米国商用部門が1年で149%伸びたのは、この形に値段が付いていることを示しています。顧客の中に技術者を置くやり方は、商売として成立しています。
名指しされているのは、中堅までです
規模で並べ直すと、線が見えます。
大企業には、システムインテグレーター経由で届きます。 Anthropicがそう書いています。
中堅企業には、専用の会社が作られました。 地域の銀行、中堅の製造業、地域の医療。Anthropicの文面に出てくる具体名です。
その下は、まだどこにも書かれていません。 OpenAIの側も、出資者が出資している2,000社という書き方をしています。投資ファンドが持っている会社ですから、相応の規模です。