2026年7月18日/株式会社東京ネット工務店 海老沢敦
① 事実
2026年、AIにコードを書かせるのは、もう当たり前になった。開発者の71%が毎日AIを使い、週に9.4時間を浮かせている。企業が今年出した新規アプリの80%が、AIエージェント——人が逐一指示しなくても、自分で手順を判断して動くAI——を積んでいる(2年前は33%)。
その裏で、こういう数字が出た。
- AIが生成したコードの48%に、脆弱性(悪意ある第三者に突かれうる欠陥)の疑いがある。
- AIを多く使うチームほど、コードレビュー(書かれたコードを人が点検する作業)の時間が91%増えた。
- ガートナーは、AIエージェントを使ったプロジェクトの40%超が、2027年までに頓挫すると予測した。理由は技術力ではない。誰が決め、誰が点検し、誰が責任を持つのかが決まっていないことだ。
出典:
- 2026 Agentic Coding Trends Report(Anthropic) https://resources.anthropic.com/hubfs/2026%20Agentic%20Coding%20Trends%20Report.pdf
- Enterprise AI Coding Agents 2026(Gartner) https://www.gartner.com/en/articles/enterprise-ai-coding-agent-market
- AI Agent Adoption 2026 https://joget.com/ai-agent-adoption-in-2026-what-the-analysts-data-shows/
② 構造 — 何が本当に変わったのか
欠陥の多さ自体は、新しくない。人が手で書いていた時代も、バグはいくらでもあった。「AIだから危険」は、論点が雑だ。
本当に変わったのは一点。その事業を分かっている人間が一度も中を通らないまま、本番が回りうるようになったこと。人が書いていた頃は、少なくとも書いた本人が一度はコードの中を理解していた。いまは、それすら無くても動いてしまう。
48%という数字が指しているのは、コードの中で完結する欠陥だ。SQLインジェクション——入力欄から不正な命令を送り込み、データベースの中身を抜き取る、よくある手口——のような、コードだけを見れば分かる穴。こういう欠陥は、スキャナ(穴を自動で洗い出すツール)が見つけるし、AIによる点検も見つける。つまり「作る・点検する」という土台の層は、急速にコモディティ化した——ありふれて、誰でも安く手にできるものになった。
問題は、事業を殺す欠陥が、そこには無いことだ。機械が見つけられる欠陥と、会社を傷つける欠陥は、別物だ。
③ 経営者の自分事 — 「消費税、だめじゃん」
あなたの会社の会計まわりに、AIが書いた消費税の計算があるとする。関数の名前は明快、静的解析(プログラムを動かさず、機械が中身を点検すること)も通る、AIに聞けば処理を正しく説明してくれる。全員が正解を出す。
だが、「だめじゃん」は、誰も言えない。
軽減税率の判定順が違う。税抜で契約しているのに内税で処理している。8%と10%が混在するのに単一の税率で丸めている。旧税率がハードコード——税率の数字がコードに直接書き込まれ、変わっても直し忘れやすい状態——で残っている。どれも、出てくる金額が間違います。 ダメな理由は、全部コードの外にある。 コードとしては、どれも完璧に正しく動く。
「コードが読める」を分けてみる。書いてある命令の意味が読める。動かすと何が起きるか読める。なぜそう作ったのか、作り手の狙いが読める。——ここまではAIが説明できるし、いずれ自動で肩代わりされていく層だ。だが最後にもう一層ある。この事業にとって妥当か、が読める。この層だけはコードの中に無い。だから機械にもAIにも、映らない。