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創刊準備号 Vol.57 / 中小企業1,668社、AI導入の阻害要因1位は「高コスト」——導入した会社は45.6%、検討中の会社は61.0%が、そう答えています

御社で「AIは高い」と言っている人は、幾らを見て言っていますか。

2026年09月17日 購読者限定

中小企業基盤整備機構が、全国の中小企業1,668社にAIの導入状況を訊いた調査を公表しました。回答した会社の81.5%は従業員30人以下です。AIの導入率は20.4%、導入を阻んでいる要因の1位は「導入にあたっての高コスト」でした。その「高コスト」の割合を、導入した会社とこれから導入する会社で分けると、数字が違います。

① 事実

中小機構が、従業員30人以下が8割を占める1,668社に訊きました

独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が2026年3月、「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」を公表しました。調査の実施は東京商工リサーチで、2025年11月17日から12月12日に全国の中小企業10,000社へ調査票を郵送し、Webで1,668社から回答を得ています(回収率16.7%)。

回答した会社の属性は、従業員30人以下が81.5%、資本金5,000万円以下が93.4%です。回答者は代表者・経営者が57.2%、管理職が22.3%。代表者の年代は60代以上が57.3%です。

調査の言う「AI」は、画像認識・音声認識・需要予測・生成AIなどAI技術を用いたサービス。「IT」は、RPA(定型作業をソフトウェアに代行させる仕組み)・クラウド会計・勤怠管理・BIツール(社内の数字を集計して見せる道具)など業務効率化を目的としたツールです。調査票は同じ設問をITとAIの両方について訊いています。

AIの導入率は20.4%、ITの導入率は55.5%です

「全社的に導入している」3.6%と「一部の業務で導入している」16.8%を合わせて、AIの導入率は20.4%です(回答1,647社)。残りの79.6%は、「導入を予定・検討中」18.6%と「導入予定はない」61.0%に分かれます。

ITは「全社的に」18.3%、「一部の業務で」37.2%で、導入率55.5%です。

米国の同じ時期の数字は19.8%です

米国商務省センサス局が全米の企業に隔週で訊いている調査(Business Trends and Outlook Survey)では、2026年5月3日時点で「過去2週間に、何らかの業務でAIを使った」企業が19.8%でした。2025年12月から2026年5月まで、17〜20%の間で推移しています。従業員4人以下では20%未満、250人以上では37%です。

日本の20.4%は「導入している」と答えた割合で、米国の19.8%は「過去2週間に使った」割合です。設問が違うので、そのまま並べることはできません。並べられる範囲で言えば、日本の中小企業と米国の企業全体は、同じ水準にあります。

AIを導入している会社が使っているサービスは、「生成AI(文章・資料作成、アイデア出し)」が82.6%で最多です。需要予測や異常検知は広がっていません。導入の目的は「業務効率化・作業時間の短縮」87.0%、「品質向上」32.3%、「人手不足対応」31.7%の順です。

阻害要因の1位は「導入にあたっての高コスト」46.9%です

「IT・AI等の導入において、感じている課題」を、導入していない会社も含めた全社に訊いています(AIの回答1,636社)。

  • 導入にあたっての高コスト:46.9%
  • 社内のAI等ノウハウ不足:42.0%
  • 社内のAI等人材不足:38.8%
  • 導入の必要性や効果が不透明:24.1%
  • 適切なサービスが見つからない:19.1%
  • 現状で満足しており、導入の必要性を感じない/認められない:18.1%
  • セキュリティ・情報漏洩の懸念:17.5%

ITについて訊いた同じ設問でも、1位は「導入にあたっての高コスト」52.4%、2位「ノウハウ不足」41.6%、3位「人材不足」38.2%で、順位は同じです。報告書は「AI・ITの両者間で大きな差は見られなかった」と書いています。

「高コスト」が何の費用か(初期費用か、月額か、人の時間か)は、調査票にありません。AIに幾ら払っているかも、この調査では訊いていません。訊いているのは、ITを導入している会社のクラウドサービスの年間契約額で、回答234社の中央値は68万9千円、100万円以下が61.5%でした。

「高コスト」と答えた割合は、導入済み45.6%・検討中61.0%です

同じ「導入にあたっての高コスト」を、AIの導入状況で分けた表が、報告書の表8にあります。

  • 全社的に導入している(57社):45.6%
  • 一部の業務で導入している(273社):48.0%
  • 導入を予定・検討中(300社):61.0%
  • 導入予定はない(986社):42.3%

「ノウハウ不足」も同じ形で、導入済みが29.8%と47.3%、検討中が59.3%です。「成功事例・活用事例の不足」は全体12.7%に対し、検討中が20.7%です。報告書はこの3項目について「導入を予定・検討している企業において5〜6割と、特に高い傾向がみられる」と書いています。

導入したあとの運用課題は別の設問で、全社的に導入している会社では「ランニングコストが高い」42.1%、「従業員による活用が進まない」40.4%です。「活用が進まない」は全体では28.9%で、全社的に導入している会社のほうが11.5ポイント高くなっています。

推進しているのは、88.0%が「特定の部署はなく、経営者・現場が個別に」です

「導入や活用を推進する担当部署はありますか」に対して、「特定の部署はなく、経営者・現場が個別に推進している」が88.0%(回答1,605社)。専任の部署がある会社は2.3%です。担当人材も「特定の担当者はおらず、経営者・現場従業員が個別に推進している」が85.9%で、専任の担当者がいる会社は3.0%でした。

社内の情報量については、「成功事例や活用事例などの情報が十分に入手できている」に当てはまらない会社が83.3%、「適切なベンダーや製品を選定する情報が十分にある」に当てはまらない会社が79.8%です。

必要な公的支援は「導入費用の助成」77.9%が最多で、「導入事例や活用事例などの情報提供」70.5%、「従業員向けの教育・研修」67.7%が続きます。

出典:

② 構造

導入前の会社のほうが、「高コスト」という判断を13〜15ポイント多くしています

ここまで、中小機構がAIの導入について1,668社に訊いた調査の数字を並べてきました。整理します。

AIの導入を阻む要因の1位「導入にあたっての高コスト」は、導入を検討中の会社で61.0%、導入した会社で45.6%と48.0%でした。検討中の会社は、導入した会社より13〜15ポイント多く「高い」と答えています。 検討中の会社はまだ払っていません。導入した会社は払っています。払った側のほうが、低く見ています。

ノウハウ不足(59.3%対29.8%)、人材不足(53.7%対33.3%)、成功事例の不足(20.7%対14.0%)も、同じ向きです。検討中の会社が挙げる障壁は、どれも導入した会社より高く出ています。

同じ調査で、導入したあとの課題を訊くと、全社的に導入している会社の40.4%が「従業員による活用が進まない」と答えています。全体より11.5ポイント高い数字です。払ったあとに残る課題は、金額より人のほうに寄っています。

「高コスト」を見積もっているのは、88.0%の会社で、専任ではない経営者か現場の社員です

「高コスト」が何の費用かは調査票にありません。その代わり、誰が答えているかは分かります。

推進する部署がない会社が88.0%、担当者がいない会社が85.9%です。AIはどの部門の担当でもないので、経営者本人か、現場の社員が本来の仕事と兼任で見ています。回答者は代表者・経営者が57.2%、管理職が22.3%。AIの導入を「高い」と見積もっているのは、その経営者か、兼任の社員です。 見積もる人と、導入したら手を動かす人が、同じ人です。

成功事例の情報が足りないと答えた会社が83.3%、ベンダーを選ぶ情報が足りない会社が79.8%。見積もりの材料が無いまま、金額を訊かれています。材料が無いときの見積もりは、高くなります。 検討中の会社の61.0%は、この状態で出た数字だと読めます。

ITの阻害要因と、AIの阻害要因は、同じ順位です

調査票は、ITとAIに同じ設問を並べました。答えの順位は同じで、1位が高コスト、2位がノウハウ不足、3位が人材不足です。ITの導入率は55.5%で、AIの20.4%より35.1ポイント高くなっています。導入率が違っても、阻んでいるものの順位は変わっていません。

本紙はVol.25で、エクセルの作業を自動化する段階を10点と呼びました。今回の調査で、AIを導入している会社の82.6%が使っているのは生成AIで、目的の87.0%は業務効率化です。ITで55.5%が通った道を、AIで20.4%が歩いている途中だと読めます。道の途中で見えている障壁は、ITのときと同じ名前で呼ばれています。

ここから先は、当社のAIの請求書は高いのか、高いなら、それでも止まらない理由は何かの話です。

検討中の会社の61.0%と、当社の「高い」は何が違うのか。御社で「高い」と言っている人に訊く質問と一緒に、登録した方に読んでもらっています。

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