CoBANTO3-AI

創刊準備号 Vol.47 / MetaのAIはどうなってるのか?——llama.com は、いま別のページに転送されます

いま使っているAIは、入れた文章を学習に使う設定になっていますか。

2026年09月07日 一般公開

最近のMetaを追っていなかったので、久しぶりに追います。

① 事実

llama.com は、developer.meta.com へ恒久的に転送されます

llama.com にアクセスすると、developer.meta.com/ai/ へ転送されます。301という種類の転送で、これは「恒久的に移った」という意味です。ブラウザにも検索エンジンにも、元の場所には戻らないと伝える形です。

開発者向けの llama.developer.meta.com も、ai.developer.meta.com へ転送されます。

Llama(ラマ)は、Metaが重みを公開してきたAIモデルのシリーズ名です。転送先のモデル一覧に、その名前はありません。残っているのは、llama.cpp という別団体が作った実行ソフトの名前としてだけです。

MetaがホストしていたLlama APIは、7月6日で終わりました

Metaは自社のドキュメントで、Llama APIの終了を告知しています。2026年7月6日にサービスを停止し、その後のリクエストには終了を知らせる応答が返ります。

ただし、Llamaモデルそのものが消えたわけではありません。Metaは同じ告知で、今後もモデルはダウンロードでき、Llamaに対応した他社のサービス経由で動かせると案内しています。Metaが手放したのは、自社でLlamaをホストして提供する窓口のほうです。

いまのMeta主力AIは「Muse Spark」です

Metaが2026年4月8日に発表したのが、Muse Sparkです。Meta Superintelligence Labs という組織が作ったモデルで、同社の説明では、道具を使う機能、視覚をたどりながら考える機能、複数のAIを束ねて動かす機能を持ちます。

扱えるのは1,048,576トークン(AIが文章を扱う単位。料金もこれで数えます)。日本語なら、単行本を何冊も一度に読ませられる長さです。

Llamaとの比較も書かれています。同じ性能に到達するのに、前世代のLlama 4 Maverickより10倍以上少ない計算量で済んだとしています。計算量とは、モデルを作るのにかかったコンピューターの資源のことです。

作り直しの期間も書かれています。「過去9か月で、Meta Superintelligence Labs はAIの仕組みを土台から作り直した。これまでのどの開発サイクルより速く動いた」。

パラメータ(モデルの中にある調整可能な数値。多いほど大きなモデル)の数は、発表文にもドキュメントにも書かれていません。書いてあるのは、規模ではなく設計の説明のほうです。

「設計として小さく、速い。それでいて、複雑な問いを考え抜けるだけの能力がある」

段階的に大きくしていく方針だとも書かれています。「各世代が前の世代を検証し、その上に積んでから、次に大きくする」。より大きなモデルを開発中だとしています。

Muse Sparkの重みは公開されていません。使うには、MetaのAPI(自社で作ったソフトウェアからAIを使うための提供方法)を通します。

Metaは別のモデルの重みを公開しました

2026年8月12日、Metaは Muse Glimmer を公開しました。300億パラメータ(AIの中にある調整可能な数値の量。多いほど大きなモデル)で、常時動かすエージェント向けだとしています。

ライセンスは Apache 2.0 です。商用利用も改変も再配布も認める、広く使われている条件です。Metaのブログは、自社がオープンなモデルに使ったなかで最も緩いライセンスだと書いています。

動かし方も具体的です。4ビットに量子化(数値の精度を落として容量を減らす処理)すると約20GB。24GBから32GBのVRAM(画像処理装置が持つ専用のメモリ)を積んだ機械に載ります。ブログの言葉では、「APIキーも要らず、トークンごとの課金もない」。

Metaのドキュメントは、このモデルをMuse Sparkから蒸留した(大きいモデルの出力を教材にして、小さいモデルに同じ振る舞いを覚えさせること)と説明しています。

有料のAPIには、料金が2段あります

Muse SparkのAPIには、StandardとContributorの2つの区分があります。100万トークンあたりの価格です。

キャッシュ入力 入力 出力
Standard 0.15ドル 1.25ドル 4.25ドル
Contributor 0.002ドル 0.10ドル 0.20ドル

出力で21倍の差があります。

条件が、価格表にそのまま書かれています。

Contributor=「あなたのプロンプトと出力を、将来のMetaモデルの学習に使う許可と引き換えに、大幅に割り引いたトークン価格」

Standard=「標準価格。あなたのプロンプトと出力は、Metaのモデルの学習には使われません」


② 構造

Metaは、配り方を用途ごとに分けました

ここまでに出てきたものを、配り方で並べ直します。

  • 無償で配るもの=Muse Glimmer。重みを公開し、ライセンスは最も緩く、手元の機械で動く
  • 売るもの=Muse Spark。重みは非公開で、MetaのAPIを通す
  • 安く売る代わりに、データをもらうもの=同じMuse SparkのContributor区分
  • 他社に渡したもの=Llamaモデル。Metaは自社の窓口を閉じ、対応する他社のサービスへ案内している

同じ会社の提供物ですが、4つとも条件が違います。値段も、重みを渡すかどうかも、入力を学習に使うかどうかも。

パラメータの数が書かれているのも、配っているほうだけです。Muse Glimmerは300億と明記され、売っているMuse Sparkには数字がありません。

MetaはAIビジネスのやり方を転回しました

Llamaの時代、Metaは主力そのものの重みを配り、使う側の規模に応じてライセンスを与えていました。基準は、Llama 4のライセンス本文に数字で書かれています。

「リリース日の時点で、前月の月間アクティブユーザーが7億人を超える製品・サービスを提供している場合、Metaにライセンスを申請しなければならない」

7億人までは自由に商用利用でき、超えた会社だけがMetaと個別に話す形です。配るときの条件も付いていました。 ライセンス全文を同梱すること、「Built with Llama」と目立つ形で表示すること、派生モデルの名前の先頭に「Llama」を付けること。

いまは、主力をAPI提供に限定しています。そして小回りの利くMuse Glimmerのほうをオープンウェイトにして、ライセンスをApache 2.0にしました。 表示の義務も、名前を継がせる義務もありません。

⇒ OpenAIやAnthropicの提供方法に寄せた形です。 主力は売り、小さいものは配ります。どちらが開かれているかは、一言では決まりません。主力を手元で動かしたい会社にとっては狭くなり、小さいモデルを自社の製品に組み込んで売りたい会社にとっては広くなっています。

主力を配らない理由は、書かれていません

Metaの発表文に、Llamaシリーズを今後どうするかは出ていません。「やめる」とも「続ける」とも書かれていません。 Muse Sparkの重みを公開しない理由も、書かれていません。

書いてあるのは、何のために作ったかのほうです。

「Muse Sparkは、Metaの製品のために作られています。より賢く速いMeta AIを動かし、いずれはInstagram、Facebook、Threadsで人々が共有している推薦や内容を引用する新しい機能につながります」

重みを公開して、専門家が手元で動かす。Llamaが出た頃は、それがこの分野の普通のやり方でした。 OpenAIが出てきてAIが商業ベースに乗り始めてから、いまの形に変わってきています。

Muse Sparkは、自社の製品のために作られたと書かれています。Metaは、その流れの中で置き場所を変えたと読めます。

もう一文あります。

「将来のバージョンについては、オープンソースにしたいと考えています」

約束ではありません。いま公開していないことと、この先どうするかが決まっていないことが、同じ一文に出ています。

Metaが書いていない部分について、報道が別の材料を出しています。以下は報道の内容で、本紙は一次を確認できていません。

2025年秋、MetaはAI関連で約600人を削減したと報じられています。同じ時期に、10年以上 Chief AI Scientist(最高AI研究責任者)を務めた Yann LeCun 氏が、退社して自身の研究会社を作ると表明しました(CNBC、2025年11月19日)。Metaはその会社と提携するとされています。

Muse Sparkが出たのは、その半年後です。Metaは、この2つを結びつけて説明していません。 時期が並んでいるところまでが、分かっていることです。

Contributorは、学習に使うと価格表に書いています

Contributorの区分を、もう一度置きます。出力が21分の1になる代わりに、入れた文章と返ってきた答えが、次のモデルの学習に使われます。

これは隠されていません。価格表の区分として置かれていて、条件がその場に書いてあります。 Standardを選べば学習には使われないとも明記されています。

⇒ 逆に言えば、利用者が入れた文章と返ってきた答えに、Metaが値段をつけました。 出力100万トークンあたり4.25ドルと0.20ドル。その差額の4.05ドルが、その値段です。


③ 自分事

AIに入れた文章に、値段がつきました

当社は顧客のソフトウェアにAIを組み込んでいます。選ぶのは、性能だけではありません。 顧客の書類をどこへ送ることになるかで、使える窓口が変わります。

これまで、その判断の材料は「安全かどうか」だけでした。Contributorは、そこに逆向きの値段をつけました。 学習に使わせてよいなら、出力は21分の1になります。使わせないなら、21倍を払います。

⇒ 入れた文章を渡すかどうかが、料金表の項目になりました。

出せないものを外せば、残りは渡せます

全部を守るか、全部を渡すかではありません。分けられます。

出せないもの——顧客の見積、図面、名簿、給与の一覧、公開していない技術。これはStandardで、差額を払います。

出せるもの——自社の商品説明、公開している技術記事、一般的な調べもの、文章の下書き。学習に使われて困るものがありません。 ここまで安いなら、渡したほうが得だと考えられます。

当社の顧客が持ち込むのは、出せない側が多いです。 差額を払っています。ただし、全部に払っているわけではありません。

明日できること

いま使っているAIサービスの設定画面を開いて、入力を学習に使う設定になっているか確かめてください。 決裁は要りません。見るだけです。

多くのサービスに、この項目があります。既定でどちらになっているかは、サービスごとに違います。

もう一つ。社内でAIを使っている人に、何を貼り付けているか訊いてください。 料金表を選んだ人と、書類を貼り付ける人が違う会社では、その2人の認識が実際の設定になります。

この区分が定着するかどうかは、まだ分かりません。定着すれば、いま無料や定額で使っているサービスの値段の見え方も変わります。自社が何を渡しているかを把握している会社だけが、その値段を比べられます。


今月のモデル

新しいAIが出るたびに、点数が並びます。ですが、点数と、自社の仕事で使えるかどうかは、別です。

今号は、新ネタ無しです。


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2026年9月7日現在で、約20のモデルに対応しています。 新しいモデルも、出たらなるべく早く入れています。モデルの手応えを試す場所としても使えます。

ご利用は事前購入のクレジット制です(1,000円から)。月額の契約ではないので、解約の手続きはありません。使った分だけ減り、無くなれば止まります。

消費は、<strong>基本料金と、答えの長さ(100字ごとに1クレジット)</strong>で決まります。短い答えなら少なく、長い答えほど多くかかります。モデルによって、1,000円で120〜200往復ほど使えます。

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https://www.netkomuten.tokyo/lp/co-banto3-ai


ライトノベル「ようこそ、東京ネット工務店へ」

海老沢が執筆している、IT業界のお仕事小説です。毎号1話ずつご紹介します。

今号の話:〈第二部 第36章「本当のリーダーシップ」〉

事故のあと、佐藤が何かを作りはじめます。注意喚起でも、手順書でもありません。

https://www.netkomuten.tokyo/channels/novel-tnk-part2/articles/ch36

小説を書いている理由

この小説は、もともと、社内の教育のために書き始めました。うちの会社——東京ネット工務店で、新しく入った人間に、この仕事の考え方を伝えるための、いわば教材でした。戦略の階層とか、取捨選択とか、口で言っても、なかなか伝わりません。だったら、物語にして読んでもらったほうが早い。そう思って、書き始めました。

ところが、いろいろあって、その教材が、要らなくなってしまいました。理由は、いろいろあります。ここには、書ききれません。ただ、宙に浮いてしまった原稿を、捨てるのも惜しくて、何度も書き直しながら、今度は、教材ではなく、ただ読んで面白い、お仕事小説として、作り直していきました。

https://www.netkomuten.tokyo/channels/atogaki/articles/atogaki-1


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