CoBANTO3-AI

創刊準備号 Vol.18 / 昨日、AIが一つ消えた——替えた先は、同じ形をしていなかった

いま使っているもの、いつまで使えますか。

2026年08月06日 一般公開

2026年8月6日/株式会社東京ネット工務店 海老沢敦

① 事実

昨日、AIが一つ、使えなくなりました。

Claude Opus 4.1というモデルです。2026年8月5日で提供が終了しました。

終了の告知が出たのは、6月5日です。

ちょうど、60日前でした。


この夏から秋にかけて、同じことが続きます。

日付 使えなくなるもの
2026年6月15日 Claude Sonnet 4/Opus 4(告知は4月14日)
2026年8月5日(昨日) Claude Opus 4.1(告知は6月5日)
2026年10月16日 Gemini 2.5 Pro/Flash/Flash-Lite
2026年10月23日 OpenAIの18モデルが、一度に(GPT-4の世代と、じっくり考える型のoシリーズ)

10月23日の18モデルには、名前を聞いたことがあるものが並んでいます。 GPT-4、GPT-4 Turbo、GPT-3.5 Turbo。移行先は、すべて現行のGPT-5.6系です。

そして、これは10月だけの話ではありません。OpenAIだけを数えても、この1年で終了するのは38モデルです(9月に5、10月に18、12月に6、来年1月に9)。


ここからが、報道にあまり出ていない部分です

一つ目。終了までの猶予が、提供元によって3倍違います。

各社が、自分で期間を決めて、公表しています。

  • Anthropic:最低60日
  • OpenAI:一般に提供しているモデルは最低6ヶ月(限定的なものは最低3ヶ月)
  • Google:最低6ヶ月(終了日が確定してから)

60日と、6ヶ月。

そして——昨日消えたOpus 4.1は、告知6月5日、終了8月5日。ちょうど60日でした。

最低ラインです。

本紙のVol.08で、こう書きました。線が引かれると、人はその手前に張り付く。 制度でも、価格でも、同じことが起きる、と。

60日と決めたら、60日で来ます。

もっとも、逆向きもあります。 Googleは、Gemini 2.5系の終了を当初は6月の予定にしていたのを、10月16日まで延ばしました。 同じ「不安定」でも、向きは一定ではありません。


二つ目。寿命は、最初から公表されています。

Anthropicは、現在使えるすべてのモデルについて、「最短でも、この日までは使えます」という日付を一覧で出しています。

  • 現行の主力モデル:2027年5月28日以降
  • その一つ前:2027年4月16日以降
  • 一年前の世代:2026年11月24日以降

保証されているのは「最短」だけです。 いつまで使えるかは分かりませんが、いつまでは使えるかは、買う前から分かります。


三つ目。終了させる理由も、公表されています。そして、「古くなったから」ではありません。

Anthropicの公式ページに、こう書いてあります。

Anthropicは現在、新しいモデルをリリースするための容量を確保するために、モデルを廃止・提供終了しています。

進歩の話ではありません。場所の話です。

そして、同じページで、その代償を自分で3つ挙げています。

  • 特定のモデルを重視している利用者は、新しい版へ移行しなければならない
  • 研究者が、継続中の研究や比較研究のためのモデルにアクセスできなくなる
  • モデルの提供終了は、安全性と、モデルの福祉に関わるリスクをもたらす

そのうえで、「いつか過去のモデルを再び公開したい」「それまでの間、モデルの重みを長期保存することを約束した」と書いています。

捨てているのではなく、しまっている。そして、しまう理由は、新しいものを置く場所が要るからです。


移行は、名前の書き換えでは済みません

新しいモデルに移ることは、名前を書き換えるだけでは済みません。

同じAnthropicの公式ページに、こういう欄があります。「APIパラメータの廃止」(API=プログラム同士が話をするための窓口。パラメータ=呼び出すときに添える設定値)。

そこにこう書いてあります。

答えのばらけ具合を指定する設定(temperature、top_p、top_k。毎回きっちり同じ答えを返させるか、少し幅を持たせるかを、こちらで指定する項目です)
Claude Opus 4.7以降のモデルでは廃止。既定値以外を設定すると、400エラーを返す。

つまり——これまで動いていた書き方が、新しいモデルではエラーになります。

モデルの名前を差し替えただけでは、動きません。

出典:

  • 【一次・2026-08-06 確認済】Anthropic「Model deprecations」(公式ドキュメント)
    • Claude Opus 4.1(claude-opus-4-1-20250805)=廃止告知 2026年6月5日/提供終了 2026年8月5日(=ちょうど60日)。移行先は claude-opus-4-8。
    • Claude Sonnet 4/Opus 4(claude-sonnet-4-20250514/claude-opus-4-20250514)=告知 2026年4月14日/終了 2026年6月15日。
    • 過去の実績=Claude Sonnet 3.7(2025年10月28日告知→2026年2月19日終了)/Haiku 3.5(2025年12月19日→2026年2月19日)/Haiku 3(2026年2月19日→4月20日)/Opus 3(2025年6月30日→2026年1月5日)。
    • 告知ポリシー(原文)=「Anthropic notifies customers with active deployments for models with upcoming retirements, providing at least 60 days' notice before model retirement for publicly released models.」
    • 現行モデルの「最短の寿命」も公表=claude-opus-4-8=2027年5月28日以降/claude-opus-4-7=2027年4月16日以降/claude-opus-4-5=2026年11月24日以降/claude-sonnet-4-5=2026年9月29日以降/claude-haiku-4-5=2026年10月15日以降。表記は "Not sooner than"(最短でも)。
    • 終了させる理由(原文)=「Anthropic currently deprecates and retires models to ensure capacity for new model releases.」/挙げられている代償3点=「Users who value specific models must migrate to new versions」「Researchers lose access to models for ongoing and comparative studies」「Model retirement introduces safety- and model welfare-related risks」/「At some point, Anthropic hopes to make past models publicly available again. In the meantime, Anthropic has committed to long-term preservation of model weights」
    • ⚠️ APIパラメータの廃止(本号でいちばん実務に効く)=temperature, top_p, top_k は Claude Opus 4.7以降で廃止。既定値以外を設定すると 400 エラーを返す。
    • https://platform.claude.com/docs/en/docs/about-claude/model-deprecations
  • 【一次・2026-08-06 確認済】OpenAI「Deprecations」(開発者向け公式ドキュメント)
    • 告知ポリシー(原文)=「Generally available models: At least 6 months. Specialized variants of generally available models: At least 3 months.」
    • 2026年10月23日に終了=13モデル+ファインチューン版5=計18(gpt-3.5-turbo/gpt-4/gpt-4-1106-preview/gpt-4-turbo/gpt-4.1-nano/gpt-4o-2024-05-13/gpt-image-1/o1/o1-pro/o3-mini/o4-mini ほか)。移行先はすべて gpt-5.6 系(gpt-5.6-sol/gpt-5.6-terra/gpt-5.6-luna)。
    • 他の終了日=2026年9月24日に5モデル(Sora 2関連)/2026年12月11日に6モデル(GPT-5・o3の旧スナップショット)/2027年1月20日に9モデル(realtime・audio系)。→ 1年で計38。
    • https://developers.openai.com/api/docs/deprecations
  • 【一次・2026-08-06 確認済】Google「Gemini deprecations」/Vertex AI
  • 【二次・②の設計パターン】 「アプリのコードは、提供元が寿命を握っている識別子に直接依存すべきではない」「間に安定した仮想モデル名を置く」「本番トラフィックの1〜10%を新モデルに流す段階移行」「閾値を超えたら100%を旧版に戻す」——複数の技術系媒体で推奨パターンとして記述されている(TrueFoundry/MLflow ほか)。⚠️ 標準規格ではなく、実務者の間で語られ始めた設計であることに注意。
  • ※ 種は inbox/2026-08-05.md ⑴⑵。日付はいずれも正しかったが、出典が個人ブログと技術系ベンダー記事だったため、3社の公式ページで全て取り直した。 その過程で、告知期間の差・寿命の事前公表・終了理由・APIパラメータの廃止という、二次に出ていない4点が出た。

② 構造 — 不安定が、仕様になった

本紙は創刊準備号の初期から、一つの見方を置いてきました。

フロンティアの企業は「出しては引っ込める」を繰り返している。 そして、それは失敗ではなく、この産業の運転の仕方そのものだ、と。

今回の事実は、その一段先を示しています。

引っ込めることが、契約条件として書き込まれました。

  • いつまで使えるかが、買う前から一覧になっている
  • 何日前に知らせるかが、提供元ごとに決まっている
  • なぜ終わらせるかまで、公表されている

不安定が、事故ではなくなりました。仕様になりました。


そして、仕様になったということは、条件を比べられるということです。

60日と、6ヶ月。

そういう条件で貸している、というだけです。そして、借りる側は、その条件を最初から知ることができます。

知ったうえで、選んでいるかどうか。 そこが分かれ目になります。


「消える」ことよりも、「置き換わる」ことのほうが、手間がかかります。

——モデルが一つ終わる。移行先も指定されている。では、名前を書き換えれば済むか。

済みません。

①に書いたとおりです。これまで動いていた設定が、新しいモデルではエラーになります。

そして、変わるのはそこだけではありません。

  • 呼び出し方が変わります(渡せる項目が減ったり、増えたりする)
  • できることが変わります(あった機能が無くなり、無かった機能が増える)
  • 値段が変わります

三つ目が、経営に直接効きます。

Vol.06とVol.07で、AIの請求書は使った分だけの従量制に移った、と書きました。同じ処理でも、モデルが変われば単価が変わります。 つまり——移行のたびに、採算の計算をやり直すことになります。


技術者の間では、こういう設計が推奨され始めています。自社のプログラムの中に、AIの型番を直接書き込まない。代わりに「主力機」といった自社での呼び名を一か所だけ決めておき、プログラムはそちらを見る。型番が変わったら、その一か所を書き換えれば済むようにしておく。 新旧を並走させて、一部だけ新しいほうに流して試す。問題が出たら、すぐ元に戻せる道を残しておく。

考え方としては、正しいと思います。

ですが、これで解けるのは、名前の問題だけです。

呼び出し方が変わること、機能が変わること、値段が変わることは、間に層を置いても消えません。 結局、プログラムを直すことになります。


この形には、見覚えがあると思います。

部品の規格変更です。

いままで使っていた部品が製造中止になる。後継品が案内される。「同等品です」と書いてある。

ところが、取り付けてみると、ネジの位置が少し違う。電源の形が変わっている。 結局、周りを直すことになる。

「同等品」は、同じ物ではありません。

Vol.15で、当社の実測として書きました。別の会社のAIへは1ヶ月あれば移せる。ただし、出てくるものの癖が変わる。 あのときは、出力の話でした。

今回は、その前の段階です。答えの中身を比べる以前に、呼び出し方の時点で、すでに同じではありません。


そもそも、替えられないことがあります。

移行先が案内されていても、性質が違って、置き換えられない場合があります。

たとえば——新しい世代のほうが、じっくり考えてから答える機能が、常に働く仕様になっていることがあります。切れません。 答えの質は上がりますが、そのぶん、返ってくるのが遅くなります。

速さが要る処理には、使えません。

両方を使い続けることになります。

これは移行の失敗ではありません。用途が分かれた、というだけです。 判断としては、たぶん正しい。

ですが、持ち物は増えます。

  • どちらをどこに使うか、決めておく必要がある
  • 両方の呼び出し方の違いを、覚えておく必要がある
  • 両方の値段を、把握しておく必要がある
  • そして、両方に寿命があります

「新しいものに替える」つもりが、「両方持つ」になります。

これも、経営者の方には見慣れた形だと思います。

新しい機械を入れたが、古いほうでしかできない加工が残っている。新しい業務ソフトに移ったが、過去のデータを見るために旧版も残してある。替えたつもりが、二重になっている。

そして、二重になっていること自体は、たいてい帳簿に出ません。 支払いは両方に発生していても、「移行できていない」という項目は、どこにも立たないからです。


歴史循環で見ると、この形自体は新しくありません。

パソコンの基本ソフトのサポート終了。ブラウザの旧版切り捨て。そのたびに、企業は自社のシステムを直してきました。

違うのは、間隔です。

あちらは数年でした。今回は、60日です。

そして、①で見たとおり——終わりが来るのは、一つずつではありません。 OpenAIは10月23日に18モデルをまとめて終わらせます。この1年で38です。

間隔が縮み、数が増えました。


ここまで来ると、Vol.12で書いたことに戻ります。

あのとき、日本の会社が独自にシステムを作ってきたことについて、問題は「作ったこと」ではなく「作り直せなかったこと」だと書きました。

AIを使う仕組みは、その性質を、極端な形で持っています。

作った時点から、寿命が始まっています。 そして、その寿命は公表されていて、こちらでは動かせません。

②の芯:作れるかどうかではなく、直し続けられるかどうかで決まります。

そして今回、直す周期は、こちらが決めていません。

③ 経営者の自分事

当社は、いま挙げた60日の側にいます。

Vol.05・15・16・17で書いたとおり、当社はAnthropicのAIを使っています。告知が最も短い提供元です。

そして、Vol.16に書いたとおり、お客様の依頼をAIが受け取って、プログラムを調べ、直し、記録を残すところまでを、実際に動かしています。

では、モデルが終わるたびに、うちで何が起きているか。


毎回、プログラムを直しています。

新しいモデルが出ると、呼び出し方の型が変わります。 それまで渡していた設定が受け付けられなくなったり、逆に新しい項目が増えたりします。機能そのものが無くなることもあれば、増えることもあります。 そして値段も変わります。

そのたびに、こちらのプログラムを直す必要があります。

これは、避けようがありません。 間に層を置いても、②に書いたとおり、名前の問題しか解けないからです。


いま主力で使っているモデルを、その次の世代に入れ替えようとしました。

できませんでした。

新しいほうは、じっくり考えてから答える機能が、常に働く仕様になっていたからです。切れません。 答えの質は上がります。ですが、遅い。

当社の仕組みは、お客様からの依頼を受けて、その場で動きます。待たされる場面が出ると、使い物になりません。

結果、両方を使うことにしました。 質が要るところには新しいほうを、速さが要るところには前の世代を。

そしてこれは、いちばん性能の高いモデルだけの話でもありません。 日常の処理に使っている、安くて軽いほうのモデルでも、同じように呼び出し方が変わっています。


②に書いた「両方持つことになる」は、うちのことです。

替えるつもりが、増えました。

判断としては、間違っていないと思っています。遅くて使えないものを無理に入れるほうが、おかしい。

ですが、管理する対象は倍になりました。 どちらをどこに使うか。呼び出し方がどう違うか。値段がいくら違うか。そして、両方に終了予定日があります。


Vol.16で、当社はAIを使うことで工数が減っている、と書きました。実際、減っています。

そして同時に、AIのせいで増えている工数もあります。それが、この作り直しです。

同じ会社の中で、両方が起きています。

減った分のほうが大きいから続けている、というだけの話です。そして、その差がこの先も同じ向きに開き続けるかは、分かりません。 直す周期を決めているのは、こちらではないからです。


それでも、この形自体は、初めてではありません。

私はこの仕事を25年やってきました。その間、土台になる仕組みは、何度も入れ替わっています。 使っていた部品が終わる。書き方が変わる。そのたびに直してきました。

今回が違うのは、間隔です。

②に書いたとおり、以前は数年に一度でした。いまは、その周期がはっきり短くなっています。

だから、やり方が変わりました。

以前は「直す」は、たまに来る臨時の仕事でした。いまは、続けて発生する定常の仕事です。

——この違いは、経営の話です。

臨時の仕事なら、来たときに人を空ければ済みます。定常の仕事なら、最初から枠を取っておかないと回りません。


AIに限った話ではありません。

  • 使っている業務ソフトの、サポートが切れる
  • 仕入れている部品が、製造中止になる
  • 頼んでいた外注先が、事業をやめる
  • 使っている決済サービスが、仕様を変える

どれも、以前からありました。 そして、たいていは「そのときになったら考える」で回ってきました。

回ってきたのは、頻度が低かったからです。

頻度が上がると、同じやり方では回りません。 臨時の対応を、続けて何度もやることになるからです。


そのうえで、明日できることを書きます。

いま使っているもので、「いつまで使えるか」が公表されているものを、一つ確かめてください。

  • 業務ソフトのサポート期限
  • 使っているクラウドサービスの、旧版の提供終了予定
  • 契約している回線やサービスの、切り替え予定
  • AIを使っているなら、そのモデルの提供終了日

多くの場合、書いてあります。 ①で見たとおり、AIの提供元は、いつまで使えるかを一覧で公表しています。 業務ソフトも、たいてい公表しています。

書いてあるのに、見に行っていないだけです。

Vol.17で、「◯◯はしないことになっている」を確かめてください、と書きました。今回は、その隣です。

「これ、いつまで使えるんだったっけ。」

そして、もう一つ。

その期限が来たとき、直す作業がどれくらいになるかを、一度だけ見積もってみてください。

「同じものに替えるだけ」で済むのか。それとも、周りを直すことになるのか。

②に書いたとおり、「同等品」は同じ物ではありません。 そして、その差がどれくらいかは、期限が来る前にしか調べられません。

——明日、こう話してみてください。「AIって、使えなくなる日が最初から公表されてるんだって。しかも会社によって、知らせが来るのが60日前だったり半年前だったりするらしいよ。……うちが使ってるあれ、いつまで使えるんだったっけ」


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ライトノベル「ようこそ、東京ネット工務店へ」

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小さなIT企業の現場を書いた小説です。毎号1話ずつご紹介します。

今号の話:〈秋編 第13話「その電話が、次を連れてきた」〉

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