昨日に引き続き、Metaです。今日は業績面です。
① 事実
Metaの利用者は36億人、売上は前年同期比28%増です
Metaが7月29日に公表した2026年4〜6月期の決算です。売上は608億ドルで、前年の同じ四半期から28%増えました。
利用者も増えています。同社が Family daily active people と呼ぶ指標——Facebook、Instagram、WhatsApp などを1日に使う人の数——が36億人で、前年比3%増。広告の表示回数は14%増え、広告1件あたりの平均単価も12%上がっています。
伸びていない項目が、ここにはありません。
純利益は14%減り、営業利益率は43%から31%へ落ちています
同じ四半期で、純利益は158億ドル。前年から14%減りました。
営業利益率は31%です。前年の同じ四半期は43%でした。理由は費用の側にあります。総費用が55%増えました。
内訳のうち、決算発表が特記しているものが2つあります。訴訟関連で24億ドル、5月の人員削減にともなう退職金で11.8億ドル。従業員数は75,472人で、前年から1%減りました。
稼ぎ頭の営業利益は、6%減っています
Metaは事業を2つの部門に分けて開示しています。Family of Apps(Facebook、Instagram、WhatsAppなど)と、Reality Labs(メタバースとVR機器)です。
米国証券取引委員会に提出した四半期報告書(10-Q)に、部門別の数字があります。
Family of Apps の営業利益は233.94億ドル。前年の同じ四半期は249.71億ドルだったので、6%減りました。
全社の売上が28%伸びている四半期に、稼ぎ頭の利益は減っています。
利益が減った理由に、他社のAIトークン代が挙がっています
報告書は、Family of Apps の利益が減った要因を並べています。人件費(退職金を含む)、データセンターとクラウドの費用、法務関連の費用。そしてもう一つ。
「third-party AI token costs」——他社のAIのトークン代です。
トークンはAIが文章を扱う単位で、料金はこれで数えます。Metaは自社でモデルを作っていて、それでも他社のAIに払っている分が、稼ぎ頭の利益を押し下げた要因として並んでいます。
Reality Labsは、4〜6月期に46.19億ドルの営業損失です
もう一方の部門です。Reality Labs の営業損失は46.19億ドル。 前年の同じ四半期は45.30億ドルでした。
半年で見ると86.47億ドルの損失で、前年の同期間(87.39億ドル)とほぼ同じです。
設備投資は、この四半期だけで310.8億ドル。通年の見通しは1,300〜1,450億ドルに引き上げられました。
最近のMetaは、会社をほとんど買っていません
年次報告書(10-K)の連結キャッシュフロー計算書から、投資活動の内訳です。単位は百万ドル。
| 2025年 | 2024年 | 2023年 | |
|---|---|---|---|
| 設備投資 | 69,691 | 37,256 | 27,045 |
| 非上場株式への投資 | 18,330 | 11 | 1 |
| 企業と無形資産の買収 | 4,231 | 270 | 629 |
2024年に買収へ使ったのは2.70億ドルです。 同じ年の設備投資372億ドルの、0.7%にあたります。
2025年は42.31億ドルに増えましたが、同じ年の非上場株式への投資183.30億ドルのほうが4倍以上大きくなっています。その非上場株式は、2024年まで0.11億ドルでした。1年で183億ドルに跳ねています。
② 構造
伸びている数字より、当たっていない話のほうが残ります
ここまでの数字を、印象と並べてみます。
Metaについて語られているのは、メタバースの赤字、AIの組み替え、人員削減です。決算の数字のほうは、売上28%増、利用者36億人、広告単価12%増。
両方とも同じ会社の同じ四半期です。記憶に残っているのは、たいてい前者のほうです。
理由は金額ではありません。Reality Labsの損失46億ドルより、Family of Appsの利益234億ドルのほうが5倍大きい金額です。 それでも話題になるのは損失の側です。
印象を作るのは、話の決着がついているかどうかです。伸びている広告事業には、もう語ることがありません。決着していない話だけが、繰り返し語られます。
利益は、選択肢の数に変わります
Metaの数字は、その変換の途中に見えます。
Family of Apps が稼いだ利益が、Reality Labs と AI の2つに流れています。 営業利益率が43%から31%へ落ちているのは、そこに突っ込んでいる最中だからです。設備投資の通年見通し1,300〜1,450億ドルも、同じ流れの中にあります。
利益が厚いほど、いまの商売の外に賭けられる回数が増えます。 これは経営の話で、規模を問いません。
選択肢を増やす力と、当てる力は別です
増えた選択肢のどれが当たるかは、別の問題です。
Reality Labs は半年で86億ドルの損失を出していて、前年の同期間とほぼ同じ水準です。 縮んでもいません。AIのほうは、前号で見たとおり、旗艦を非公開に切り替えて自社製品向けに組み直したところです。
⇒ 金で買えるのは、賭ける回数のほうです。 どれに当てるかは、別の能力になります。
稼ぎ頭は削られ、Reality Labsは縮んでいません
4つの数字を並べます。
稼ぎ頭の営業利益は6%減りました。 その要因に、他社のAIトークン代が並んでいます。Reality Labsの損失は半年で86億ドルで、前年とほぼ同じです。そして買収には、2024年で2.70億ドルしか使っていません。
稼ぐ側は削られ、賭ける側は縮まず、買ってくる道は使っていません。 3つが同時に起きています。
他社のAIトークン代が、稼ぎ頭の費用に並んでいるところは、前号と繋がります。Muse Sparkは自社の製品のために作られたと書かれていました。
費用に載っているということは、支払いが通ったということです。 開発の現場で自社のモデルでは足りない場面があり、他社のものを使いたいという要求が上がったことまでは、読めます。
分からないのは、その先です。会社が方針として認めたのか、現場が先に使っていて止められなかったのか。 四半期報告書には、どちらとも書かれていません。
外に出るのは、費用の行だけです。 経営の判断があったのかどうかは、そこには残りません。
過去の当たりは、買ってきたものでした
MetaがInstagramとWhatsAppを手に入れたのは買収です。他社が需要を当てたあとを買っています。
その買収を、いまはしていません。2024年で2.70億ドル、2025年で42.31億ドル。代わりに増えたのが、支配権を取らない出資です。 2025年に183.30億ドル。
この形について、報道が背景を伝えています。以下は報道の内容で、本紙は一次を確認できていません。 MetaはScale AIに143億ドルを出して49%を取得し、同社の経営者をAI部門の責任者に迎えました。支配株ではないため、自動的な独禁審査の対象にならないと指摘されています。2026年2月には、この形について米国の上院議員が両当局に調査を要請しました。一方で、InstagramとWhatsAppの買収については、独禁法に違反しないとの司法判断が出ています。
当てたものを買ってくる形が使いにくくなると、自分で当てる必要が出てきます。 Reality LabsとAIの数字は、その途中経過として読めます。
③ 自分事
私は、Quest 3を買って、売りました
ここは作る側の話ではありません。一人の消費者として買って、しばらく使って、売りました。 売ったというのは、文字どおり売却したという意味です。
作りは良かったです。残らなかったのは、被って何をするかのほうでした。 重心が前にあるので首と肩に来ますし、仰向けで映画を見るのが最適だと思って試すと、姿勢に合わせて画面が追いかけてきて安定しません。立って歩く人を想定した設計です。
社内で試して、用途が埋まらなかったので手放しました。それだけの話です。
印象を作っているのは、金額の大きい話ではありません
当社でも同じずれが起きます。
社内でいちばん長く話される出来事と、いちばん金額の大きい出来事は、別のことが多いです。 決着した仕事は話題になりません。揉めた案件と、うまくいかなかった試みのほうが、何か月も話に出ます。
その状態が続くと、伸びている月でも社内の空気は重くなります。数字を見れば違うのに、見ていないので分かりません。
現場は、自社製かどうかで選びませんでした
Metaの費用の行に、もう一度戻ります。開発の現場は、他社のAIを使いました。 自社でモデルを作っている会社の中で、です。
現場が見たのは、どちらが仕事に使えるかだった、と読めます。自社製かどうかは、選ぶ材料に入っていません。
同じことは、規模を問わず起きます。社内で「うちはこれを使う」と決めても、現場は使えるほうを使います。 決めた側がそれを知るのは、たいてい請求書が来たときです。
フラットに評価するというのは、全部試すということです
一昨年はコーディング支援AI(コードを書くのを人が使いながら助けてもらう道具)が、去年はコーディングエージェント(人が逐一指示しなくても、自分で手順を決めてコードを書くAI)が、各社から続々と出ました。皆が試した時期です。当社も、出たものは大抵一度は試しています。
説明を読んで決めたのではありません。動かして、同じ案件で比べました。
現場が自社製かどうかを見ないのは、比べた結果を持っているからだ、と読めます。比べていない人は、決めた理由を説明に頼るしかありません。
自社製以外は使わない、と決めている会社もあると聞きます
SIer(システムを請け負って作る会社)の何社かで、自社製のフレームワーク(開発の土台になる共通の部品)以外は使わない、という決め方をしていると人づてに聞いたことがあります。一次で確かめた話ではありませんし、いまもそうかは分かりません。
開発者には、とても不評です。ただし、会社の戦略としては批判できません。 責任の範囲がはっきりします。開発の情報も外に出ません。
ベンダーロックイン(特定の製品や会社に縛られて、他へ移れなくなること)で見ると、三方向に効いています。
一つ目は顧客です。自社製のフレームワークで作ったシステムは、その会社でないと手を入れられません。顧客のほうが、そのSIerから離れられなくなります。
二つ目は、自社が外から縛られない側です。外部の製品を土台にすると、その製品の値上げや仕様変更に付き合うことになります。自社製なら、そこは起きません。
三つ目が開発者です。汎用の技術が身につかないので、その会社の中でしか通じない技能が溜まります。 他社へ移りにくくなります。
残るのは、開発者の不満をどう見積もるかです。Metaの費用の行は、そこがクリアされていないと読めます。 自社でモデルを作っている会社で、現場は他社のAIを使い、その支払いが通っています。
利益が厚いほど、いまの商売の外に賭けられます
これは説明の要らない話です。利益が出れば選択肢が増え、そこから次の商売が生まれます。読者の方が毎年やっている判断です。
Metaと違うのは金額で、構造は同じです。 稼いでいる事業の利益を、まだ稼いでいないものに流す。流した先が当たるかどうかは、流す前には分かりません。
当たらなかったときに何が起きるかだけが、規模で変わります。Metaは半年で86億ドル失っても、稼ぎ頭が234億ドル出しているので四半期が回ります。そこは会社ごとに違うので、自社の数字で見るしかありません。
明日できること
去年の利益のうち、いまの商売の外に使った分がいくらか、数字で出してください。 決裁は要りません。すでにある数字を分けるだけです。
ゼロなら、今年の選択肢は増えていません。それが悪いという話ではなく、そういう年だった、という事実です。
先月のAI関連の請求を、サービス名で並べてください。 社内で決めたもの以外が載っていたら、現場はそちらのほうが使えると判断しています。
今月のモデル
新しいAIが出るたびに、点数が並びます。ですが、点数と、自社の仕事で使えるかどうかは、別です。
今号は、新ネタ無しです。
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ライトノベル「ようこそ、東京ネット工務店へ」
海老沢が執筆している、IT業界のお仕事小説です。毎号1話ずつご紹介します。
今号の話:〈第二部 第37章「深夜の招集」〉
深夜、顧客のエンドユーザーに届いた案内メールに、他人の名前と注文履歴が載っていたという苦情が入ります。同じ機能は、何社でも動いています。
https://www.netkomuten.tokyo/channels/novel-tnk-part2/articles/ch37
小説を書いている理由
この小説は、もともと、社内の教育のために書き始めました。うちの会社——東京ネット工務店で、新しく入った人間に、この仕事の考え方を伝えるための、いわば教材でした。戦略の階層とか、取捨選択とか、口で言っても、なかなか伝わりません。だったら、物語にして読んでもらったほうが早い。そう思って、書き始めました。
ところが、いろいろあって、その教材が、要らなくなってしまいました。理由は、いろいろあります。ここには、書ききれません。ただ、宙に浮いてしまった原稿を、捨てるのも惜しくて、何度も書き直しながら、今度は、教材ではなく、ただ読んで面白い、お仕事小説として、作り直していきました。
https://www.netkomuten.tokyo/channels/atogaki/articles/atogaki-1
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