CoBANTO3-AI

創刊準備号 Vol.44 / OpenAIは「ExploitBenchで満点」と自社の発表文に書きました——比べた相手は、自社の前のモデルでした

自社の成長を、いま何と比べて語っていますか。

2026年09月04日 一般公開

① 事実

OpenAIは、Astraを「危険水準に達した最初のモデル」と自ら指定しました

OpenAIが9月1日、Astraというモデルについて公表しました。自社の安全性の枠組み(Preparedness Framework)で、サイバーセキュリティの能力が「重大(Critical)」の水準に達したと判断した、最初のモデルだとしています。

中身は、こう書かれています。

「適切な道具とアクセスがあれば、まだ知られていない安全上の欠陥を見つけ、十分に防御された多くのシステムに対して、人が一手ずつ導かなくても、それを突く方法を作り出せる」

発表文には、危険水準に達したと指定するまでの順序も書かれています

  • 以前の評価では「達するかもしれない」だった。 その後、追加の証拠と評価を集めて、今回「達した」と判断した
  • ここ数週間、開発とリリースの一部を遅らせた。悪用と無許可の動作に対する保護を強化し、試験するため
  • 他社で起きた事故に触れ、「Astraは関与していない」と断ったうえで、その学びを取り込んだとしている。「振り返りの試験では、当時の本番の安全装置がその事故を防いでいたと考える」
  • そのうえで、さらに強い安全装置を実装した

ExploitBenchで100%。直後に、汚染の懸念があると書いています

能力の根拠として、数字が並んでいます。

「一例として、ExploitBenchでAstraを走らせたところ、既知の脆弱性から攻撃手段を作る能力を測るこのベンチマークで、100%という満点を記録しました」

その直後に、注記があります。

「汚染の懸念があるため、より新しく公表された20件の重大な脆弱性を含む内部ベンチマークを、あらためて作りました」
タグ=モデル, セキュリティ

汚染とは、測る問題が学習した内容に混じっている状態のことです。

こういう仕組みで起きます。ベンチマークの問題と答えは、たいてい公開されています。モデルは大量の文章を読んで作られるので、その公開されている問題と答えを、先に読んでいることがあります。 試験の前に過去問と解答を見ているのと同じ状態です。公表されてから時間が経った問題ほど、そうなりやすくなります。

だからOpenAIは、より新しく公表された20件の重大な脆弱性で内部ベンチマークを作り直した、と書いています。満点を出したうえで、その数字の根拠を自分で留保しています。

比較対象は、自社の前モデルです

他の数字も出ています。

  • サイバー分野の脱獄(安全装置をすり抜けさせる試み)の評価で、Astraは91.5%の要求を拒否した。比較対象は自社の前モデルで、そちらは59%
  • 攻撃手段を作れと指示した試験で、前モデルは56%の試行で自社のセキュリティ基盤へアクセスを試みた。Astraは0件

どれも、相手はOpenAIの前のモデルです。

安全確認が、正当な作業を止めることがあると書かれています

留保も併記されています。

「追加の安全確認は、防御側のサイバーセキュリティを含む正当な作業を、遅らせたり、一時停止させたり、止めたりすることがあります」


② 構造

3社が同じ週に、同じ形を出しました

本紙は前々号でAnthropic、前号でGoogleを扱いました。3社とも、同じ週に、同じ形の発表をしています。

  • Anthropic——Claude Mythos 5.1。Fable 5.1と同一のモデルで、緩めた版は審査を通った相手だけ
  • Google——Gemini 3.8 Flash Cyber。同じ土台のモデルで、審査を通った防御側だけ
  • OpenAI——Astra。危険水準に達したと自ら指定し、強い安全装置とともに出す

危ないので制限します、という形が3つ並びました。

物差しが、1つも重なっていません

前号で書いたとおり、3社が能力の根拠として挙げた評価の名前は、1つも重なっていません。

  • Google——DeepSWE v1.1、Vals Finance Agent V2、Harvey's Legal Agent Benchmark、HLE-Verified、CyberGym、CWE-Bench
  • Anthropic——Terminal-Bench 4.0、OSWorld 2.0、AutomationBench、GDPval-AA v2
  • OpenAI——ExploitBench(と、自社で作り直した内部版)

重ならないので、点数を並べても比べられません。比べられないなら、比較相手は自分しかいなくなります。 実際、Astraの数字はすべて自社の前モデルとの比較でした。

そのうえ、満点を出した物差しは、汚染の懸念があると発表文自身が書いています。

読む側は、能書きは読めますが、評価には至れません

並べ直すと、こうなります。

  • 物差しは、自社が選んだもの
  • 比較相手は、自社の前のモデル
  • その物差しの信頼性は、自社が留保している
  • 危険水準に達したという判定も、自社の枠組みでの自社の判断

⇒ 同じ試験を他社のモデルで走らせて並べることが、外からはできません。 数字を検算する方法も、公表されていません。

書かれていることは読めます。何ができるようになったと言っているかは分かります。それが本当かどうか、他と比べてどうかは、リリース文からは分かりません。


③ 自分事

自社が選んだ物差しで、自社を測る。同じことを、読者の会社もやっています。

前年比は、楽です

去年より受注が増えた、去年より粗利が改善した。前年比は、いちばん手に入りやすい物差しです。 数字がありますし、計算もできます。

そして、去年の自分は反論しません。

同業と比べるのは面倒です。相手の数字は出てきませんし、条件も違います。取引先に「他と比べてどうですか」と訊くのは、気が進みません。だから、比べる相手が自分だけになります。

自分の物差しが悪いのではありません

問題は、物差しそのものではありません。自社の基準で測ること自体は、必要な仕事です。

外から確かめられる数字を、一つも持っていない状態が問題です。 そのとき、良くなったという話は、聞いた側にとって「そう言っている」以上のものになりません。

明日できること

直近で受注した1件について、「なぜうちに決めたか」を相手に訊いてください。 決裁は要りません。訊くだけです。

返ってきた理由が、自社で挙げていた強みと同じなら、物差しが外と合っています。違っていたら、そちらが外から見えている姿です。


今月のモデル

新しいAIが出るたびに、ゲームを作らせたとか、ベンチマークばかりが並びます。ですが、その点数と、自社の仕事で使えるかどうかは、別です。

前号で追加したGemini 3.8 Flashを、CoBANTO3-AIで触りました。本紙の第30号(バイブコーディングの話)を持ち出して、「部下が外注を切って、自分でシステムを作ると言い出した」という相談で壁打ちをしています。

  • 素のGeminiという感じです。 暴走もしませんし、こちらに合わせて調子を変えることもありません。Geminiアプリや検索に組み込まれたものとは、手触りが違います。
  • 答えが安定していて、読みやすい。
  • こちらが渡した文脈の引用が、適切です。 無理に当てはめようとしません。
  • 戦略の階層の話で、壁打ちの相手として実用に耐えます。
  • 出力が速く、そして安い。

クレジットの消費も、はっきり違いました。 同じ導入で話して、Gemini 3.8 Flashは1回あたり2〜5クレジット。Claude Fable 5.1(いちばん時間をかける設定)は13〜24クレジットでした。

ただし、この差の見え方には理由があります。 Geminiのほうが、1回に長く答えていました。CoBANTO3-AIのクレジットは、基本の分と、100字ごとの分で決まります。長く答えるほど増える設計です。

100字あたりで揃えると、差はもっと開きます。 1回あたりで3倍から5倍に見えたのは、答えの長さが違ったからです。

このコスト感なら、1,000円で200往復ほど使えます。


CoBANTO3-AIチャットを無料体験しませんか?

本紙のバックナンバーを記憶し、本紙の読み方(戦略の階層・歴史循環)で、あなたの状況に当てて答えるAIチャットです。記事は「地図」ですが、地図は現地には当たりません。「この号の話、うちの場合はどうなるのか」を訊く場所として用意しました。

調べもの、文章の下書き、ちょっとした雑談にも使えます。 普段づかいのチャットとして、気軽にどうぞ。

ご利用は事前購入のクレジット制です(1,000円から)。月額の契約ではないので、解約の手続きはありません。使った分だけ減り、無くなれば止まります。

消費は、<strong>基本料金と、答えの長さ(100字ごとに1クレジット)</strong>で決まります。短い答えなら少なく、長い答えほど多くかかります。モデルによって、1,000円で120〜200往復ほど使えます。

読者登録をいただいた方には、無料クレジットを500クレジット、プレゼントします。 登録は、この記事のすぐ下からできます。

CoBANTO3-AIチャットは、こちらから。無料で体験できるので、ぜひこの機会に触ってみてくださいね。

https://www.netkomuten.tokyo/lp/co-banto3-ai


ライトノベル「ようこそ、東京ネット工務店へ」

海老沢が執筆している、IT業界のお仕事小説です。毎号1話ずつご紹介します。

今号の話:〈第二部 第35章「責めない」〉

その夜、誰も帰りませんでした。三十万件をどう戻すか。それだけを考える夜です。最初に口を開いたのは、田中でした。

https://www.netkomuten.tokyo/channels/novel-tnk-part2/articles/ch35

小説を書いている理由

この小説は、もともと、社内の教育のために書き始めました。うちの会社——東京ネット工務店で、新しく入った人間に、この仕事の考え方を伝えるための、いわば教材でした。戦略の階層とか、取捨選択とか、口で言っても、なかなか伝わりません。だったら、物語にして読んでもらったほうが早い。そう思って、書き始めました。

ところが、いろいろあって、その教材が、要らなくなってしまいました。理由は、いろいろあります。ここには、書ききれません。ただ、宙に浮いてしまった原稿を、捨てるのも惜しくて、何度も書き直しながら、今度は、教材ではなく、ただ読んで面白い、お仕事小説として、作り直していきました。

https://www.netkomuten.tokyo/channels/atogaki/articles/atogaki-1


Q&Aコーナー

AI・IT業界に関するご質問を募集しています。CoBANTO3-AIチャットのサポートも、こちらへお願いします。

本紙の通知メール・LINEに、そのまま返信していただけます。

読者登録をされていない方は、こちらからどうぞ。

いただいたお名前は匿名にして回答します。内容によっては、個別に回答させていただく場合があります。

4694文字 ・ 約8分

ほかの読みもの

新しい号から読む

第1号から読む

このチャンネルのポリシー

著作権
チャンネル掲載の記事・小説等の著作権は海老澤敦に帰属します。当該コンテンツの掲載および当サイトの運営・管理は株式会社東京ネット工務店が行っています。その他、当サイトのコンテンツおよびロゴ・商標等の権利は同社に帰属します。
引用
当サイトのコンテンツは、通常の「引用(出典を明記した上で、一部を転載すること)」であれば、事前の連絡なく行っていただいて構いません。ただし、当サイトの文章や画像をAIのトレーニングデータ(生成AIの学習、機械学習、データ解析等)として取り込むこと、およびスクレイピングによる自動収集は固くお断りいたします。 Prohibition of AI Training and Data MiningWhile text quotation under copyright law is permitted with proper credit, the use of any content on this website for AI training, machine learning, text/data mining, or web scraping is strictly prohibited.
リンク
リンクは自由です。事前のご連絡は不要です。