2026年8月26日/株式会社東京ネット工務店 海老沢敦
① 事実
Appleが、最大512GBのMacを出しました
2026年8月25日、Appleが新しい Mac Studio を発表しました。予約はその日から、発売は9月22日です。
上位の M5 Ultra チップを積んだ構成で、ユニファイドメモリ(CPUとGPUが同じ場所を共有して使う記憶領域。AIのモデルは、この上に丸ごと載せて動かします)が最大512GB。メモリ帯域幅(記憶領域との間で1秒あたりに運べる量)は1.2TB/秒で、前の世代より50%高いとAppleは書いています。
Apple自身が、用途を名指ししています。
数千億のパラメータを持つ巨大なLLMを、完全にデバイス上で実行する
日本語版の発表文では、こうです。
ユーザーのプライバシーを完全に保った状態で、大規模なモデルを完全にデバイス上で実行できるようにします。
タグ=料金
価格は、こうなっています。
| 構成 | メモリ | 帯域幅 | 価格(税込) |
|---|---|---|---|
| M5 Max | 36GB(標準) | 460GB/秒 | 419,800円から |
| M5 Ultra | 96GB(標準) | 1.2TB/秒 | 949,800円から |
| M5 Ultra(96GB・1TBストレージ・36コアCPU/80コアGPU) | 96GB | 1.2TB/秒 | 1,183,800円 |
512GBの構成は、価格が発表されていません。 10月下旬に加わる予定と書かれています。
最大消費電力は480W(連続使用時)です。
3年前は、64GBと1TBで37万7,800円でした
当社は2023年9月11日に、Mac Studioを買っています。 構成はM2 Max(12コアCPU・38コアGPU)、ユニファイドメモリ64GB、SSDストレージ1TB。価格は377,800円(税込)でした。
2026年の新型は、36GBとストレージ512GBで、419,800円からです。
同じ構成が、3年後に36万9,000円で落札されています
2026年8月17日、M2 Max・64GB・1TBのMac Studioが、ヤフオクで369,000円で落札されました。動作確認済みの中古品です。
当社が買った構成と、同じです。
377,800円で買って、3年後に369,000円。差は8,800円です。
⭐ ただし、この二つは税の扱いが違います。 377,800円はApple公式の税込価格で、税抜では343,455円。ヤフオクの落札額は個人売買なので、消費税がかかりません。
税抜で並べると、343,455円で買って、369,000円です。
⚠️ 落札の実績が1件です。 円が安く、新品が値上がりしている時期でもあります。この額で売れ続けるとは書けません。
出典(一次):
- Apple Newsroom「Appleが新しいMac StudioをM5 MaxとM5 Ultraとともに発表」および「Apple、M6とM5 Ultraを発表」(2026年8月25日/帯域幅・メモリ容量・引用した記述) https://www.apple.com/jp/newsroom/2026/08/apple-introduces-new-mac-studio-with-m5-max-and-m5-ultra/
- Apple「Mac Studio 技術仕様」(最大消費電力480W/構成別のメモリと帯域幅) https://www.apple.com/jp/mac-studio/specs/
- Apple「Mac Studioを購入」(価格・構成・512GBの発売時期) https://www.apple.com/jp/shop/buy-mac/mac-studio
- 当社の購入記録(2023年9月11日注文/M2 Max・64GB・1TB/377,800円税込)と、2026年8月17日の落札実績(同構成/369,000円)
② 構造
使うほど増える費用と、買った時点で決まる費用
新しいMacを、開発用の作業機として買うのでなければ、用途はAIを自社で動かす土台になります。 比べる相手は、他のパソコンから、毎月払っているAIの利用料に変わります。
二つは、費用の形が違います。
| AIの利用料 | 機械 | |
|---|---|---|
| 増え方 | 使うほど増える | 買った時点で決まる |
| 使わない月 | ゼロ | 変わらない |
| 大量に使うと | そのぶん増える | 電気代が少し増えるだけ |
| 3年後 | 何も残らない | 売れる |
電気代は、月2,300円ほどです
最大消費電力は480Wです。
1日8時間、月20日、全力で回し続けたとして、160時間で76.8kWh。 1kWhあたり30円で計算すると、約2,300円です。
24時間止めずに回しても、月345.6kWh、約10,400円にしかなりません。待っているだけの時間は、数十W程度です。
AIの利用料が月10万円の会社にとって、電気代は2%です。 回収の計算を、ほとんど動かしません。
月30万円払っているなら、4ヶ月で戻ります
118万3,800円の機械を、毎月のAIの利用料と比べます。
| 月のAI利用料 | 機械代が戻るまで |
|---|---|
| 10万円 | 11.8ヶ月 |
| 20万円 | 5.9ヶ月 |
| 30万円 | 3.9ヶ月 |
| 40万円 | 3.0ヶ月 |
利用料が大きい会社ほど、早く戻ります。 そしてAIの利用料が大きくなるのは、そこそこのモデルを大量に使う会社です。 性能の高いモデルを少しだけ使う会社では、そこまで膨らみません。
その「大量」は、実際に測られています。 ある大手の中継サービスを通った2026年6月のAIの処理量のうち、重みが公開されているモデル(オープンウェイト=誰でもダウンロードして自分の環境で動かせるモデル)が29%を占めました。 4月は11%です。ところが金額では、4%に届いていません。
安いモデルに、量が流れています。 手元に持ってこられるのは、この部分です。
請求書に載らない費用があります
電気代より、こちらのほうが大きい。
- 誰が動かし続けるか。 機械が止まったとき、モデルを入れ替えるとき、動かなくなったとき。
- 壊れたら、その間どうするか。
- 新しいモデルが出たら、誰が試すか。
- ⭐ いま使っているAI向けに書いた指示が、別のAIでそのまま効くとは限りません。 当社は今号のフッターに、その実例を書いています。指示書は、相手に合わせて書かれています。
本紙はVol.28で、自社で動かすAIについて「誰が動かし続けますか」と書きました。 その問いは、機械を買っても消えません。むしろ、買ってから始まります。
何と比べるかで、答えが変わります
3年前に買った機械と比べれば、新型は高い。 当社が64GBと1TBに払った377,800円では、今は36GBと512GBです。
毎月のAIの利用料と比べれば、数ヶ月で戻ります。
同じ機械で、同じ値段です。 変わったのは、比べる相手だけです。
本紙は前号のフッターで、触ったモデルについて「速度は、相対評価しかできません」と書きました。 手元の機械より速いか、借りているサービスより遅いか。値段も、同じ形をしています。
③ 自分事
当社の関心は、一度離れて、戻りました
手元でAIを動かすことに、当社は一度、関心を失っています。
理由は単純で、会話の相手として使うなら、借りたほうが速くて賢かったからです。 手元で動く小さなモデルは、ChatGPTやClaudeの代わりにはなりませんでした。
戻ってきたのは、用途が変わったからです。
会話ではない仕事があります。 大量の文書から必要な部分を抜き出す。仕分ける。判定する。同じ処理を、何万件も繰り返す。そこでは、賢さより、量と単価が効きます。 そして待たされても困りません。 夜に回しておけば済みます。
⚠️ この関心の戻りは、当社の都合とタイミングです。 戻っていたところに、新しいMacが出ました。
3年間で、戻ってきた分はゼロです
当社が2023年に377,800円(税込)で買った機械は、いま369,000円で落札されています。税抜で買値を見れば343,455円ですから、3年使って、買ったときより高い。
同じ3年間に、AIの利用料として払った金額のうち、戻ってきた分はゼロです。
これは、どちらが得かという話ではありません。 借りているあいだ、当社は最新のモデルを使えていました。買った機械には、それはできません。
形が違うだけです。 片方は使った分だけ消え、片方は買った時点で決まって、あとで一部が戻る。
明日できること
⚠️ どれも、決裁は要りません。
一つ目。 先月のAIの利用料を見てください。 クラウドの請求書でも、カードの明細でも構いません。金額が分からなければ、そこが出発点です。
二つ目。 その金額のうち、「同じ処理を大量に繰り返している分」がどれだけあるかを、使っている人に訊く。 一件ずつ考えて答えを出す仕事と、決まった形で仕分ける仕事では、置き場所が変わります。
三つ目。 機械を買うと決める前に、「誰が動かし続けるか」を先に決める。 名前が出てこなければ、まだ早い。
⚠️ 規模で変わります。 数人の会社なら、動かし続けるのは社長自身になります。数十人なら、その人の他の仕事を減らす話になります。どちらでも、名前は要ります。
今月のモデル
新しいAIが出るたびに、点数が並びます。ですが、点数と、自社の仕事で使えるかどうかは、別です。
今号:Qwen3.5-397B-A17B(Alibaba/2026年2月)
中国のAlibabaが重みを公開しているモデルです。総パラメータ3,970億のうち、一度に動くのは170億(512の専門家から11個を選ぶ形)。文脈は262,144トークンで、設定を変えれば約101万トークンまで伸びます。画像と動画も扱い、201の言語に対応します。
配り方はApache-2.0——商用でも自由に使える、広く知られた許諾条件です。前号のKimi K3が独自の条件だったのと、ここが違います。
⭐ このモデルは、既定で「考えてから答える」設定になっています。 答えを出す前に、内部で考えを書き出します。そのぶん、時間がかかります。
当社は、CoBANTO3-AIのシステムプロンプト(AIに毎回渡している、役割と答え方の指示書)を変えずに、モデルだけをこれに差し替えて試しました。
返ってきたのは、どこの会社にも当てはまる一般的な答えでした。
⚠️ これは、モデルの出来の話ではありません。 当社の指示書は、Claude向けに書いて、直し続けてきたものです。GPTに差し替えたときは、ここまでずれませんでした。今回は、指示の効き方そのものが違いました。
⭐ 同じ指示書が、相手によって違う効き方をします。
CoBANTO3-AIチャット
https://www.netkomuten.tokyo/lp/co-banto3-ai
本紙のバックナンバーを記憶し、本紙の読み方(戦略の階層・歴史循環)で、あなたの会社の状況に当てて答えるAIチャットです。記事は「地図」ですが、地図は現地には当たりません。「この号の話、うちの場合はどうなるのか」を訊く場所として用意しました。
ご利用は事前購入のクレジット制です(1,000円から)。月額の契約ではないので、解約の手続きはありません。使った分だけ減り、無くなれば止まります。
読者登録をいただいた方に、無料クレジットを500クレジット追加させていただきました。ぜひ使ってみてください。
ライトノベル「ようこそ、東京ネット工務店へ」
https://www.netkomuten.tokyo/channels/novel-tnk-part2/articles/ch25
小さなIT企業の現場を書いた小説です。毎号1話ずつご紹介します。
今号の話:〈第二部 第25章「覚醒」〉
三日詰まっていた不具合があります。そこへ、コードを一行も書けない人が席に来ます。
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