CoBANTO3-AI

創刊準備号 Vol.71 / AIを「深く理解している」中小企業経営者22.7%は、8割がもう使っている——残りの43.8%は何が分からない?

あなたの会社でAIを使うとしたら、最初に名前が挙がる業務は何ですか。

2026年10月01日 購読者限定

中小企業の経営者の66.5%がAIの活用を「理解している」。フォーバルの研究所が9月28日に出したプレスリリースの見出しです。見出しは続けて、業務で活用している会社は36.9%にとどまると書いています。報告書の本編を開くと、二つの数字は選択肢の文言も割っている人数も違います。

① 事実

調査は、フォーバル GDXリサーチ研究所が6月に、全国の中小企業の経営者に訊いたものです。プレスリリースに出ているのは要約で、全14ページの報告書(ブルーレポート)が8月21日に公開されています。本編には、設問の選択肢と、設問ごとに誰に訊いたかが書かれています。そこから読むと、「理解」と「活用」の数字の意味が変わります。

フォーバルの研究所は、6月に中小企業の経営者1,653人に訊きました

フォーバル GDXリサーチ研究所は、中小企業向けに情報通信機器や経営支援のサービスを売っている株式会社フォーバル(東証スタンダード上場)が、2022年に立ち上げた研究所です。

調査は2026年6月1日から30日まで、ウェブのアンケートで行われ、有効回答は1,653人でした。対象は全国の中小企業の経営者です。

「理解している」66.5%のうち、43.8%は「自社事業への適用方法までは理解できていない」と答えています

最初の設問は、事業におけるAI活用をどの程度理解しているかです。「仕組みや活用メリットを深く理解し、業務にどう適用できるか把握している」が22.7%、「概要は知っているが、自社事業への適用方法までは理解できていない」が43.8%でした。残りは、関係がないので関心を持ったことがない15.7%と、わからない17.8%です。

見出しの66.5%は、はじめの二つを足した数です。そのうち43.8%は、<strong>「自社事業への適用方法までは理解できていない」</strong>という選択肢を選んだ人です。報告書の本文も、自社の業務への具体的な活用を理解している企業は2割程度にとどまる、と書いています。

「既に業務で活用」の36.9%は、1,099人のうちの割合です

2問目のAIの導入・活用状況は、1問目で上の二つを選んだ1,099人にだけ訊いています。結果は「既に業務で活用している」36.9%、「導入に向けて検討・試験運用している」20.1%、「必要だと思うが導入できていない」34.2%、「導入するつもりはない」8.7%でした。

回答者の1,653人全体で数え直すと、既に業務で使っているのは約406人で、<strong>およそ4人に1人</strong>です。

深く理解している人は80.8%が使っていて、概要だけの人は14.2%でした

報告書は、2問目の結果を1問目の答えで分けています。

「深く理解し、業務にどう適用できるか把握している」人では、80.8%が既に業務で使っていました。「概要は知っているが、自社事業への適用方法までは理解できていない」人では、既に使っているのは14.2%で、半分の50.4%が「必要だと思うが導入できていない」と答えています。

報告書は、導入の鍵になるのは実務での運用方法を具体的にイメージできるかどうかだ、と書いています。

AI活用の理解度と導入状況(フォーバル GDXリサーチ研究所・2026年6月・中小企業経営者1,653人)。理解度は、深く理解22.7%、概要は知っているが自社事業への適用方法までは理解できていない43.8%、関心なし15.7%、わからない17.8%。既に業務で活用している割合は、深く理解している人で80.8%、概要のみの人で14.2%(概要のみの人の50.4%は必要だと思うが導入できていない)

使い道の上位は文書作成と調査で、答えたのは「深く理解して、使っている」303人です

使っている業務と、導入した理由を訊いた設問の回答者は303人です。1問目で「深く理解している」と答えた約375人のうち、既に使っている80.8%にあたります。報告書の効果の節には、この303人を「AIの仕組みや活用メリットを深く理解し、既に業務で活用している企業」と書いています。プレスリリースは、この限定を「既に業務で活用している企業」とだけ書いています。

使っている業務(複数回答)は、文書作成・要約・校正が71.9%、情報収集・調査が61.7%、企画案・アイデア出しが52.8%、営業資料・提案書の作成が50.5%でした。定型業務・入力作業の自動化は31.4%、現場作業・業務プロセスの自動化は27.4%です。

導入した理由は、業務効率化・工数削減が75.9%、生産性向上が67.7%でした。新規事業や新たな収益機会の創出は22.4%、競合他社との差別化は16.8%です。

使っているAIは、会社が管理しているサービスが47.2%、<strong>個人で登録したサービス</strong>が38.0%、両方の併用が13.5%でした。

導入できない376人の理由は、1位が人材、2位が「どの業務に使えるかわからない」でした

「必要だと思うが導入できていない」と答えた376人に、理由を訊いています(複数回答)。

専門知識・ノウハウを持つ人材がいないが53.7%、どの業務に使えるかわからないが47.9%、具体的な進め方がわからないが47.3%でした。費用対効果が不明確は25.5%、費用を確保できないは22.1%、セキュリティや情報漏洩のリスクは15.2%です。

出典:

② 構造

フォーバルの調査で、AIを使っているかどうかを分けていたのは、自社のどの業務に当てるかを言えるかどうかでした。調査の設問そのものも、業務の一覧にAIを当てはめる形で組まれています。政府の人工知能基本計画は、同じAIを組織の単位で書いています。二つを戦略の階層で並べると、調査が測っている段が見えます。AIを多く使っている人の使い方を、利用の記録から調べた論文もあります。パソコンが家庭に広がったときの数字も、並べておきます。

「理解」と「活用」を分けていたのは、自社のどの業務に当てるかを言えるかどうかでした

フォーバルの調査で「理解している」の66.5%を二つに割ると、違いは一点です。自社の業務にどう当てるかを把握しているか、していないか。把握している22.7%は8割が使っていて、把握していない43.8%は1割台です。

導入できない理由の2位と3位も、「どの業務に使えるかわからない」「具体的な進め方がわからない」でした。1問目で43.8%が選んだ選択肢と、同じことを言っています。

プレスリリースは「理解から実践」への壁、と書いています。本編の数字からは、壁は理解と実践の間より手前、<strong>AIを一般論として知っていることと、自社の業務の名前で言えることの間</strong>にあると読めます。

使っている303人が挙げた使い道も、業務の一覧の中にありました

いちばん分かっている303人が挙げた使い道は、文書作成、調査、企画、資料作成でした。どれも、会社にもともとある業務の名前です。目的も、効率化と工数削減が上位で、差別化は16.8%です。

報告書の結びで、研究所長の平良学氏は「国が描く『変革』と現場の『効率化の手段』との間には、現状ではギャップがあると考えられる」と書いています。

政府の計画は、AIを業務より上の、組織の単位で書いています

内閣府の人工知能基本計画は、副題に「日本AX」を掲げ、具体的な取組の最初に「AIを基軸とした組織経営改革を促す」と書いています。制度や政策についても「AIを前提として再構築する」としています。本紙はVol.40で、経済産業省の審議会の議論から、DXは道具を入れる話、AX(AIトランスフォーメーション)は仕組みを作り直す話だと読みました。

戦略の階層で並べると、政府の計画は組織をどう組むかという戦略の段で書かれていて、調査の設問は、いまある業務のどれにAIを当てるかという戦術の段で訊いています。組織の組み方が変わる使い方は、「どの業務に使っていますか」という設問の選択肢には現れません。調査は6月に行われていて、7月14日の閣議決定より前です。

OpenAIの論文は、AIを多く使う人は「使い方の形が違う」と書いています

OpenAIの研究者が、コロンビア大学、ペンシルベニア大学ウォートン校、デューク大学の研究者と共著で、6月25日に論文を出しています。OpenAIのAIエージェント(人が逐一指示しなくても、自分で手順を判断して動くAI)「Codex」の利用の記録を、個人の利用者、会社で契約している利用者、OpenAIの社員の三つに分けて調べたものです。OpenAIが自社の製品と自社の社員を調べた論文なので、その前提で読む必要があります。

多く使う人はたまに使う人と<strong>質的に違って見える</strong>、と論文は書いています。具体的には、スキル(繰り返す仕事の手順や決まりごとを書いておき、AIに毎回読ませる仕組み)を使う、長く複雑な仕事を任せる、複数のエージェントを同時に動かす、の三つです。

同時に動かしているエージェントの数では、会社で契約している利用者の67.4%が、1週間のうちに一度も同時に動かしていませんでした。OpenAIの社員では、一つずつしか動かしていない人が10.7%で、28.6%が五つ以上を同時に動かしたことがありました。スキルを1週間に一度でも使った人は、会社で契約している利用者で30.4%、OpenAIの社員で96.2%です。

論文は結論で、AIの広がりは使う道具が変わることにとどまらず、AIを中心に仕事をどう組むかが変わることだ、としています。多く使う人の役割は、仕事を任せ、見て、確かめ、束ねる側へ移っている、とも書いています。そのうえで、利用者の数や会話の数のような、これまでのAI利用の測り方は、情報として役に立たなくなっていくかもしれない、と書いています。

パソコンは、世帯の半分に届くまで14年かかりました

内閣府の消費動向調査がパソコンを調べ始めた1987年3月、世帯の普及率は11.7%でした。1993年まで10〜12%の間を行き来し、半分を超えたのは2001年3月の50.1%です。

その前から、多くの人は、自分で操作しないままコンピューターに関わっていました。1969年12月に住友銀行が日本で初めて現金自動支払機を支店に置き、1982年10月にはセブン‐イレブンがPOS(販売時点情報管理=レジで売れた商品を記録し、発注に使う仕組み)を始めています。

消費動向調査の普及率は、家にパソコンがあるかどうかを数えた数字です。何に使っているかは、数えていません。

③ 自分事

私のAIの使い方は、人に説明してもほとんど伝わりません

ここから先は、当社の話です。

当社のAIの使い方は、人に説明してもほとんど伝わりません。その理由を、この調査の問いの形に見ています。登録した方に読んでもらっています。

  • 無料
  • ほぼ毎日
  • 全71号
  • 最新 2026/10/01

ご登録で、CoBANTO3-AIの無料クレジットを500ぶんお渡しします。おひとりさま一度だけです。

読むのが面倒なら、登録後にこの号についてAIに訊けます。

ほかの読みもの

新しい号から読む

第1号から読む

このチャンネルのポリシー

著作権
チャンネル掲載の記事・小説等の著作権は海老澤敦に帰属します。当該コンテンツの掲載および当サイトの運営・管理は株式会社東京ネット工務店が行っています。その他、当サイトのコンテンツおよびロゴ・商標等の権利は同社に帰属します。
引用
当サイトのコンテンツは、通常の「引用(出典を明記した上で、一部を転載すること)」であれば、事前の連絡なく行っていただいて構いません。ただし、当サイトの文章や画像をAIのトレーニングデータ(生成AIの学習、機械学習、データ解析等)として取り込むこと、およびスクレイピングによる自動収集は固くお断りいたします。 Prohibition of AI Training and Data MiningWhile text quotation under copyright law is permitted with proper credit, the use of any content on this website for AI training, machine learning, text/data mining, or web scraping is strictly prohibited.
リンク
リンクは自由です。事前のご連絡は不要です。