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春編 第2章:その「効率」が、黒田さんの半日を奪った

2026年08月03日

春編 第2章:その「効率」が、黒田さんの

半日を奪った

 入社から一ヶ月。

 少しずつ仕事に慣れてきた。コードレビュー

で指摘される回数も減ってきた。

 一度、前の日に書いたコードでnullの

チェックが抜けているのを見つけて、朝いち

ばんに直そうとしたことがある。開いてみた

ら、もう直っていた。レビューのコメントも、

意図のメモも何もついていない。誰かがつい

でに触ったんだろうと思って、そのまま閉じ

た。

 そのころ、一つ気づいたことがあった。

 オフィスの隅にはレトロゲーム機が並んで

いる。こたつもある。初日に海老沢さんは

「仕事中にゲームしてもいい」と言った。

 でも、誰も触っていない。白石さんも黒田

さんも黙々とコードを書いている。

 休憩時間に僕は白石さんに聞いてみた。

「白石さん、ゲームやらないんですか?」

「ん?やるよ。昨日も帰る前にちょっとスト

2やった」

「でも、仕事中は……自由なんですよね?」

「自由だよ。だから自分で決める。今はゲー

ムする時間じゃないって」

 自由って楽じゃない。誰も監視していない。

でも、だからこそ自分で律する。形式は自由。

でも、本質は厳しい。やっぱり甘くないな、

この会社。

---

 でも、その「厳しさ」の中で、僕がどうし

ても馴染めないものが一つあった。

 ドキュメントだ。

 この会社はやたらと書く。設計メモ、コン

テキスト記述、コードの意図の記録。コード

を一行直すたびにその「背景」を書かされる。

コードさえ読めば分かるだろ。こんなのただ

の非効率だ。

 大学のサークルでは「とにかくスピード」

だった。細かいことは後回し。まず作って、

まず出す。それで結果を出してきた。

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