春編 第3章:余計な一言で、僕は契約を壊
しかけた
入社から二ヶ月。ある日、僕は白石さんと
一緒にクライアントのオフィスを訪問した。
クライアントは小さな食品メーカー。在庫管
理システムの改修を依頼されていた。
賭けは僕の二連敗。さすがに焦っていた。
今日こそ僕が役に立つところを見せる。"シ
ビアなビジネス"ってやつを。
「実はもう一つお願いがあるんです」
担当者の山本さんが言った。
「配送業者との連携機能を追加してほしいん
です。でも、予算が……」
「通常だと三百万円くらいになります」
白石さんが答えた。
「さ、三百万円……」
山本さんは顔を青くした。小さな食品メー
カーだ。そんな大金はどう見ても出せない。
「正直そこまでの予算は全くありません……」
その時だった。ここだ。ビジネスはシビア
であるべきだ。情に流されちゃいけない。
僕は口を挟んだ。
「山本さん、正直に申し上げると、その予算
感だと弊社としても受けるメリットが薄いん
です。値引きありきだと、いいものは作れま
せんし」
——空気が凍った。
山本さんの顔からすっと表情が消えた。
「……そう、ですよね。すみません、無理を
言って」
声のトーンが変わっていた。さっきまでの
「相談」が「お断り」に変わる音だった。あ
れ……?