夏編 第9章:黒田さんとの協働
夏も終わりに近づいた頃。初めて黒田さん
と一緒にプロジェクトを担当することになっ
た。
黒田さんはあまり喋らない人だ。
歓迎会の夜に見せたあの別の顔を除けば。
昼間はほとんど画面に向かっている。声をか
けると必要最低限の言葉で返してくれるが、
雑談はしない。最初は「怖いのかな」と思っ
ていた。でも、そういうわけでもなさそうだ。
ただ、仕事に集中しているだけで、質問すれ
ばちゃんと答えてくれる。
そして、仕事はめちゃくちゃ速い。
「桜井くん、この機能一緒にやろう」
「はい!」
黒田さんはタスクを二人で分担した。
「私がバックエンド、桜井くんがフロントエ
ンド。API仕様はこれ」
黒田さんはドキュメントを共有した。
見ると、API仕様がめちゃくちゃ詳細に
書かれていた。
エンドポイント、リクエスト、レスポンス、
エラーハンドリング。
すべて明記されている。
「こんなに詳細に書くんですか?」
「うん。後で『これどうするんだっけ?』っ
てならないように」