秋編 第13章:その電話が、次を連れてき
た
旅館の予約システムがリリースから二週間。
すっかり女将さんの店に馴染んだ頃だった。
その女将さんから電話があった。
「桜井さん、ちょっと相談があるんですけど」
「はい、何でしょうか?」
「実はお客さんから『ギフト券を買えるよう
にしてほしい』って要望が多くて……」
「ギフト券ですか」
「うん。宿泊ギフト券。誕生日プレゼントと
か、お祝いとかで」
女将さんは続けた。
「できれば一ヶ月くらいで欲しいんだけど…
…」
「一ヶ月……」
僕は頭の中で計算した。ギフト券システム、
決済連携、管理画面、メール通知。機能とし
ては結構複雑だ。
「女将さん、少しお時間もらえますか?すぐ
に概算を出して折り返します」
「はい、お願いします」
電話を切った後、僕は見積もりを計算した。
ギフト券発行・消し込み機能は幸いBANT
O3に組み込まれている。でも、決済連携の
カスタマイズ、管理画面の調整、メール通知
のテンプレート作成……ゼロから作れば三百
万円くらいかかる規模だ。
BANTO3があっても、一ヶ月納期だと、
他の案件を止めないといけない。これは海老
沢さんに相談しないと。
---
僕は海老沢さんのデスクに行った。
「海老沢さん、相談があります」
「ん?どうした?」
僕は女将さんからの依頼と自分の概算を説
明した。
「ギフト券機能。BANTO3にギフト券発
行の機能はあるんですが、カスタマイズが必
要です。ゼロからなら三百万円規模。納期一ヶ
月だと他の案件に影響が出ます」
海老沢さんは少し考えた。
「桜井くん、この機能、他の旅館でも使えそ
うか?」
「はい、絶対に使えます。むしろ汎用的な機
能なので一度作れば BANTO3のパッケー
ジに追加できます」
「なるほど……」
海老沢さんはホワイトボードに簡単な図を
描いた。BANTO3を土台に置いて、その
上にこの案件だけの部分を薄く乗せる。どこ
を共通の基盤に任せ、どこを個別に作り込む
か——システムの役割分担を示した概念図の
ようなものだった。
「じゃあ、こうしよう。納期を一ヶ月半にし
てもらえるか女将さんに確認して」
「一ヶ月半ですか?」
「そう。一ヶ月半あれば他の案件と並行でき
る。開発コストを抑えられる」
海老沢さんは続けた。