冬編 第18章:断るべきか、受けるべきか
二月初旬。バレンタインのチョコレートが
コンビニに並び始めた頃、会社に大きな案件
が舞い込んできた。四人のオフィスには似つ
かわしくない規模の話だった。
「地方自治体の観光情報サイト。予算は八百
万円」
海老沢さんが説明した。
「初めての公共案件だ。規模も大きい。納期
は二ヶ月」
「二ヶ月……」
「自治体との仕事は実績になる。成功すれば
他の自治体にも横展開できる可能性がある」
海老沢さんは続けた。
「桜井くん、メインで担当してもらう。白石
さんと黒田さんがサポート。リナさんもでき
る範囲で手伝って」
僕は緊張した。初めての公共案件。しかも、
メイン担当。でも、やるしかない。
「やります」
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プロジェクトが始まった。要件定義、設計、
実装。順調に進んでいた。
しかし、開始から三週間後。問題が発生し
た。
「桜井さん、これ見てください」
リナさんがクライアントからのメールを見
せた。
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観光情報、三言語対応(日本語、英語、中国
語)にしたいです。
追加費用はかけられません。
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僕は頭を抱えた。多言語対応。追加費用な
し。これはかなり厳しい。
「リナさん、どう思う?」
「理論的には断るべきです。追加費用なしで
工数が一・五倍になる。非合理的です」
「……でも」
「でも?」
「断ったらクライアントとの関係が壊れるか
もしれない」
「それはクライアントが非合理的だからです。
こちらに非はありません」
リナさんはきっぱりと言った。
僕は迷った。理論的には、リナさんの言う
通りだ。でも、三方良しPlusの観点では?
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