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冬編 第18章:断るべきか、受けるべきか

2026年08月03日

冬編 第18章:断るべきか、受けるべきか

 二月初旬。バレンタインのチョコレートが

コンビニに並び始めた頃、会社に大きな案件

が舞い込んできた。四人のオフィスには似つ

かわしくない規模の話だった。

「地方自治体の観光情報サイト。予算は八百

万円」

 海老沢さんが説明した。

「初めての公共案件だ。規模も大きい。納期

は二ヶ月」

「二ヶ月……」

「自治体との仕事は実績になる。成功すれば

他の自治体にも横展開できる可能性がある」

 海老沢さんは続けた。

「桜井くん、メインで担当してもらう。白石

さんと黒田さんがサポート。リナさんもでき

る範囲で手伝って」

 僕は緊張した。初めての公共案件。しかも、

メイン担当。でも、やるしかない。

「やります」

---

 プロジェクトが始まった。要件定義、設計、

実装。順調に進んでいた。

 しかし、開始から三週間後。問題が発生し

た。

「桜井さん、これ見てください」

 リナさんがクライアントからのメールを見

せた。

---

観光情報、三言語対応(日本語、英語、中国

語)にしたいです。

追加費用はかけられません。

---

 僕は頭を抱えた。多言語対応。追加費用な

し。これはかなり厳しい。

「リナさん、どう思う?」

「理論的には断るべきです。追加費用なしで

工数が一・五倍になる。非合理的です」

「……でも」

「でも?」

「断ったらクライアントとの関係が壊れるか

もしれない」

「それはクライアントが非合理的だからです。

こちらに非はありません」

 リナさんはきっぱりと言った。

 僕は迷った。理論的には、リナさんの言う

通りだ。でも、三方良しPlusの観点では?

---

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