番外:歓迎会の夜 ── 黒田さんの、別の
顔
入社から三ヶ月。
「桜井くんの歓迎会やろうか」
海老沢さんが言った。
「え、今さらですか?」
「遅くなったけどね。今日の失敗も乗り越え
たし、いい区切りだから」
「……ありがとうございます」
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午後七時。
四人でオフィスを出た。
「どこ行きますか?」
僕が聞くと、黒田さんが間を置かずに、
「……荒木町」
と、短く答えた。もう決まっているみたい
だった。
「荒木町?」
「四谷三丁目の近く。飲み屋街」
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靖国通りを防衛省を左に見ながら曙橋方面
へ歩いて、中央大学市ヶ谷キャンパスの前を
左に曲がり、急な坂を上った。坂の途中で右
の路地へ入った。
狭い路地が入り組んだ昭和の雰囲気が残る
飲み屋街。荒木町だ。
狭い路地の両側に小さな居酒屋やバーが並
んでいる。看板には手書きの文字。レトロな
雰囲気がなんだか心地よい。
「この辺詳しいんですか?」
僕が黒田さんに聞くと、黒田さんは小さく
頷いた。
「……まあ私はね」
そしてある小さな雑居ビルの前で立ち止まっ
た。
「ここ」
階段で二階へと上がると、障子のような引
き戸があった。引き戸を開けると、カウンター
席だけの小さな店。焼き鳥の香ばしい匂いが
漂ってくる。席は半分ほど埋まっていて、コ
の字カウンターの角には「予約席」と書かれ
た小さな札がそっと置かれていた。
「いらっしゃい……あ、黒田さん!」
店主が満面の笑みで迎えた。
「久しぶり!最近どう?」
「ぼちぼちです」
黒田さんが少し笑った。いつもより表情が
柔らかい。え?
普段寡黙な黒田さんがこんなに親しげに?
「黒田さん、常連なんですか?」
白石さんも驚いた様子だった。
「……まあね」
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コの字カウンターの角に横並びに座ると、
カウンター越しに生ビールが三つと、下戸の
白石さんにはウーロン茶が渡された。
「じゃあ、桜井くんの歓迎会改めて乾杯!」
白石さんの音頭で全員がグラスを掲げた。
「乾杯!」
ビールを一口飲む。少し苦いが、喉を通る
爽快感がある。
そして黒田さんもビールをぐいっと飲んだ。
「……ぷはー」
黒田さんが満足そうに息を吐いた。あれ?
なんか雰囲気変わった?
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二杯目のビールが来た頃。