CoBANTO3-AI

第30章 賭ける

2026年08月05日

30章 賭ける

 その一週間は長かった。

 Sプロジェクトの穴は思っていたより深かっ

た。それだけじゃない。世の中の風向きがはっ

きり変わりはじめていた。

 田中くんがある朝、スマホを僕に見せてき

た。

「桜井さん、これ見ました? やばくないっ

すか」

 広告だった。新しくできたAI制作の会社。

「ホームページ、AIで、最短即日。月額九

千八百円」。写真も、文章もぜんぶAIが作

る。人はほとんど介さない。

「うち一件何十万ってもらってるじゃないっ

すか。これ月九千八百っすよ」

「……だね」

 返す言葉がなかった。安さでは勝てない。

速さでも、もう勝てない。

 似たような会社がこの冬、いくつも生まれ

ていた。どこも同じことを言っていた。「A

Iで、安く、速く」。お客さんは当然そっち

に目が行く。整骨院の院長さんみたいに自分

でやってみる人もいる。Sプロジェクトみた

いに中に抱える会社もある。

 ——僕たちの売っていた仕事が足元から溶

けていく。

 そういう冬だった。

---

 約束の日。海老沢さんが全員を集めた。

 七人しかいない狭いオフィス。机を寄せて

車座になった。白石さんも、黒田さんもいた。

みんななんとなく、これがただの朝礼じゃな

いと分かっていた。

「先週Sが抜けた」海老沢さんは前置きなし

に始めた。「でかい。隠さない。あれで来期

の数字はけっこう苦しい」

 誰も何も言わなかった。

「それに、街には月九千八百円の店ができた。

安くて、速い。うちがこれまで売ってきたも

の——『きれいなサイトをちゃんと作りま

す』ってやつはこれからどんどん値段がつか

なくなる。はっきり言う。今までのやり方の

延長線上にうちの未来はない」

 きつい言葉だった。でも、誰も反論できな

かった。みんな薄々感じていたことだった。

「で、ここからが本題だ」

 海老沢さんは車座をぐるりと見回した。

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