CoBANTO3-AI

第36章 本当のリーダーシップ

2026年08月05日

36章 本当のリーダーシップ

 あの夜から数日して、佐藤くんが僕のとこ

ろに来た。

「壁を作ります」

「壁?」

「ログがたまたま救ってくれました。でも、

たまたまに頼っちゃいけない。次はログでも

拾えない消し方をするかもしれない。——だ

から、そもそも確認を飛ばせない仕組みにし

ます」

 佐藤くんが作ったのは、意志に頼らない壁

だった。

 リリースのボタンを押す。すると、その前

に機械が勝手に空打ちを走らせ、結果を確か

める。一つでもおかしなところがあれば——

ボタンは押せない。赤い字で止められる。ど

んなに急いでいても、どんなに疲れていても。

あの夜の僕や佐藤くんでも。

「人は疲れたらサボります」佐藤くんは朝礼

でぼそぼそと説明した。「僕が証明しました。

桜井さんも。——だから、サボれないように

しました。意志の力じゃなくて。仕組みで」

 田中くんが「フロントも同じやつ入れたっ

す」と続けた。

 誰ももう、あの夜のことを蒸し返さなかっ

た。代わりに、その失敗から生まれた壁がこ

れからずっと僕たちを守る。痛みがちゃんと

形に変わっていた。

---

 おもしろいことに、その壁はすぐに売り物

になった。

 新しく紹介で来る、古い船を抱えた会社。

そこにも同じ恐怖があった。「移行の途中で

データが飛ぶんじゃないか」。当然の不安だっ

た。

 僕たちはもう、その答えを持っていた。

「うちはAIに移行をやらせます。速いので。

——でも、AIが書いたものは本番に流す前

に必ず機械が空打ちで確かめます。人が確か

め忘れても止まる仕組みです。だから、AI

の速さはもらって、AIの事故はもらわない」

 佐藤くんがあの夜、三十万件を本当に消し

て、一晩かけて拾い直して手に入れたその答

え。それが今、お客さんのいちばんの不安を

溶かす言葉になっていた。

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