CoBANTO3-AI

第39章 戻ってきた

2026年08月05日

39章 戻ってきた

 二年目の終わり。

 外濠公園の桜がまた固い蕾をつけていた。

一年前と同じ景色。でも、その下を歩く僕は

もうずいぶん違う人間になっていた。

 賭けは勝った——とまでは言えない。世の

中のAIの波は止まらないし、安くて速い店

は今も増え続けている。でも、うちは潰れな

かった。それどころか、炎上した古い船をこ

わさずにBANTO3へ運ぶあの「型」を目

当てにお客さんが来るようになっていた。安

くも、速くもない。けれど、最後まで責任を

取る。火事場で逃げない。——それを選んで

くれる人がちゃんといた。

 四人はもう去年の春の四人じゃなかった。

---

 年度末の打ち上げ。会社の近くのいつもの

居酒屋。暮れと同じ店だ。

 田中くんはもう「よしなに」なんて言わな

かった。詰まると自分で線を引いて、その先

を自分でたどる。この前なんて僕が口を出す

前に、自分で答えまでたどり着いていた。一

年前、海老沢さんに撃沈させられたあの田中

くんが。

 佐藤くんの作った「飛ばせない壁」は社外

でも知られはじめていた。「あのAI移行の

安全のやつ、どうやってるんですか」と、よ

その会社から聞かれる。見えない仕事の男が

いちばん見られる場所に出ていた。

 ハルカさんはもうデザイナーとは呼ばれて

いなかった。お客さんの話を聞いて、世界観

を立てて、それを自分で形にして、動かす。

肩書きのない仕事。たぶん、いちばんこれか

らの仕事だった。

「サマラブ、春の大会あるっすよ」と、田中

くん。「黒田さん、出ます?」

「出る」と、黒田さん。それだけだった。盤

面でも荒木町でも、人の流れを読ませたらこ

の人の右に出る者はいない。この一年でみん

ながそれを思い知っていた。

 海老沢さんが「今年こそ抜く」とスマホを

出した。いい大人が二人、また順位を競りは

じめた。一年経っても、いちばん偉い二人が

いちばんガチだった。

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