第2章 みんなで行きましょう
夕方になると、田中くんはたいてい誰かを
どこかへ誘っている。
「ハルカさん、今日飲み行きません?」
来た、と思った。私はにこにこして、いつ
もの通りに返す。
「いいですねえ。みんなで行きましょう」
「うわー、また来たー」田中くんが大げさに
のけぞった。「ハルカさんのそれ! 誘うと
絶対"みんなで行きましょう"。完全にテン
プレ回答じゃないっすか」
私は、あはは、と笑って否定もしなかった。
否定する必要もない。テンプレ回答だと言わ
れれば、その通りだからだ。うまくかわして
いるという自覚はちゃんとあって、それを田
中くんに悟らせない自信も同じくらいあった。
田中くんは一つ息をついて、それ以上は押
さなかった。押さないところがこの人のいち
ばんいいところだ。誘ってかわされても傷つ
いた顔をしない。たぶん姉さんか妹さんがい
るのだと思う。女の子の機嫌の直し方も、か
わされ方も、頭ではなく体で覚えている人だ。
——それからくるっとリナさんのほうを向い
た。
「……じゃあ、リナさんは」
リナさんはキーボードから手を止めずに言っ
た。
「いまハルカさんに断られたばっかりで。よ
くそのまま私にいけるね。……その"じゃあ
"、なに」
一拍、あって。