CoBANTO3-AI

第7章 均さない絵

2026年08月05日

第7章 均さない絵

 佐藤くんがBANTO3に季節を覚えさせ

た。

 春が来たら、桜。夏は、涼しく。秋は、実

りの色。冬は、静けさ。トリガーとテンプレ

を決めておけば、あとは勝手に回る。六社だっ

たのがいつのまにか十社を超えていた。放置

ぎみだった古いお客さんのサイトが季節ごと

にちゃんと衣替えをする。世の中の放りっぱ

なしのホームページと比べたら、これはもう

じゅうぶん生きている部類だった。

 面が回りはじめた。うまくいっている。

 ただ、そのうまくいっている流れの中で、

私は一軒だけ手を止めていた。あの染めと織

りの工房。二十件の一覧のなかで、ひとつだ

け指が止まったあの一軒だ。

 自動のテンプレに乗せれば楽だった。春が

来れば、この工房にも桜色の帯が届く。効率

だけを考えれば、そうすべきなのだと思う。

私の中にもその声はある。全部同じ流れで回

してしまえたら、どんなに楽だろう。

 でも、それはたぶん、この一軒を殺す。

---

 私はその工房に行ってみた。

 二代目は思っていたより若い人だった。私

とそう変わらないかもしれない。父親の跡を

継いで、まだ間もないという。作業場の壁に

反物が何本も掛かっていた。その色を見て、

私は、あ、と思った。

 きれいな色ではなかった。いや、きれいな

のだけれど、私たちがふだん「きれい」と呼

ぶあの澄んだ、均された色とは違っていた。

少しくすんでいて、少しふぞろいで、でも、

そのくすみとふぞろいのなかになんともいえ

ない深さがあった。生きている色だ、と思っ

た。機械でいっぺんに染めた色には絶対に出

ない色。

「父のは」二代目はうまく言葉にできないよ

うだった。「なんかこう……今のぱっときれ

いなやつとは違うんです。うまく言えないん

ですけど。……これをなくしたくなくて」

 なくしたくない。でも、どうすればいいの

かは言えない。——一年前、白石さんから聞

いたあの手触りだった。

 私は分かった気がした。この人がなくした

くないのは色じゃない。色の向こうにあるお

父さんの世界の見方だ。均さないという生き

方だ。ふぞろいを、ふぞろいのまま深いと言

えるあの目だ。

---

 会社に戻って、私はこの一軒だけ自動のテ

ンプレを使わなかった。

 VPOKEを開いて、まずはふつうに頼ん

でみた。「秋の感じにしてほしい。落ち着い

た、いい感じに」。——それが間違いだった。

ここから先は、登録した方に。

「ライトノベル「ようこそ、東京ネット工務店へ」第三・五部 ハルカ編」に登録すると、この号の続きと、これまでの号すべてを読めます。

  • 無料
  • 全10号
  • 最新 2026/08/05

ご登録で、CoBANTO3-AIの無料クレジットを500ぶんお渡しします。おひとりさま一度だけです。

読むのが面倒なら、登録後にこの号についてAIに訊けます。

ほかの読みもの

新しい号から読む

第1号から読む

このチャンネルのポリシー

著作権
チャンネル掲載の記事・小説等の著作権は海老澤敦に帰属します。当該コンテンツの掲載および当サイトの運営・管理は株式会社東京ネット工務店が行っています。その他、当サイトのコンテンツおよびロゴ・商標等の権利は同社に帰属します。
引用
当サイトのコンテンツは、通常の「引用(出典を明記した上で、一部を転載すること)」であれば、事前の連絡なく行っていただいて構いません。ただし、当サイトの文章や画像をAIのトレーニングデータ(生成AIの学習、機械学習、データ解析等)として取り込むこと、およびスクレイピングによる自動収集は固くお断りいたします。 Prohibition of AI Training and Data MiningWhile text quotation under copyright law is permitted with proper credit, the use of any content on this website for AI training, machine learning, text/data mining, or web scraping is strictly prohibited.
リンク
リンクは自由です。事前のご連絡は不要です。