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第41章 御社、Web系でしょ

2026年08月05日

41章 御社、Web系でしょ

 案件の資料を開いたとき、既存ベンダーの

名前のところで桜井さんが、へえ、という顔

をした。

「ここ、僕就活で受けたんですよ」少し笑っ

てそう言った。「最終まで行って落ちました」

 就活で片っ端から落ちたという話は前に聞

いていた。だから私も、へえ、と思っただけ

だった。名前の大きい古い会社。介護のソフ

トを二十年、この法人に納めてきた相手だ。

請求も記録もシフトも、ぜんぶその会社のシ

ステムの中で回っている。今度のAIの話も

本当ならそこが受けるはずだった。それがど

こかでこじれて止まっている。私たちはその

隙間に呼ばれた。

「厄介な立場だね」桜井さんは資料を閉じた。

「向こうからしたら、後から来て自分たちの

城に勝手に窓を開けようとする連中だ」

---

 顔合わせは、法人の会議室だった。

 古いビルのいちばん上の階。壁には金色の

額に入った表彰状が何枚も並んでいた。地域

の福祉功労。永年勤続。どれにも先代の理事

長の名前が入っていた。磨かれた長机の片側

に私たち。向かいに法人の人たちと既存ベン

ダーの人たちが座っていた。

 法人側は二人だった。情シス部長の柏木さ

ん。五十半ばの髪をきっちり分けた慎重そう

な人。それから、二代目の東さん。まだ四十

前に見えた。先代から法人を引き継いだばか

りだとあとで聞いた。金色の額の中の名前と

同じ苗字をこの人は背負っている。疲れた目

をしていた。継いだものが思っていたよりずっ

と複雑だった——そう言いたげな顔だ。

 そして長机の向こう、ベンダー側の真ん中

にPMの戸田さんがいた。五十くらい。感情

の出ない顔をした人だった。

 私たちの名刺を戸田さんは指先で少しだけ

動かした。裏を見て、また表に戻す。それか

ら口を開いた。

「東京ネット工務店さん、ね」——一拍置い

た。「御社、Web系でしょ」

 軽蔑ではなかった。少なくとも、そういう

形では出てこなかった。ただ、確認するよう

にそう言った。

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