第42章 見なくても、わかる
顔合わせから三日で、私は設計をほぼ書き
上げていた。
問題の形は、初日の帰りの電車でもう見え
ていた。暗い車窓に映る自分の顔の向こうに、
三つの層が勝手に浮かんで並んでいた。あと
は、それを指が追いつく速さで置いていくだ
けだった。眠るのがもったいないくらいだっ
た。こういうとき、私の頭はいちばん機嫌が
いい。
ホワイトボードに、私は三つの層を描いた。
「家族からの問い合わせ。それと職員の記録
と相談。この二つがいちばん人手を食ってる」
マーカーのきゅっという音。「家族対応はど
この施設でも隠れた最大負荷なの。『昨日、
母はどうでしたか』の電話が一日に何十本も
来る。職員がそのたびに手を止める。相談の
ほうはもっと根が深い。新人が誰にも聞けな
くて、一人で抱えて、辞めていく。……この
二つだけAI社員に引き取らせる。基幹には
指一本触らない」
「触らないで、データどう読むんすか」田中
くんが菓子パンをくわえたまま言った。