CoBANTO3-AI

第60章 うれしいから

2026年08月05日

60章 うれしいから

 AI社員の言葉づかいを、私は一つずつ見

直していた。

 電話には人が出るようになった。でも、A

Iの仕事がなくなったわけじゃない。家族向

けのアプリにその日の様子を短く書いて届け

る。面会の予定。持ち物のお知らせ。——わ

ざわざ電話にするほどでもないこまごました

文字の通知は、まだAIが受け持っていた。

どれも正確なのに、冷たかった。

「ご様子に変わりはございません」

 間違ってはいない。事実、その通りなんだ

から。でも、これをスマホの画面越しに仕事

の合間に読む家族のことを思うと、何かが足

りなかった。決定的に。何が足りないのか、

私には分からなかった。——分からないとい

うことが悔しかった。あんなに設計は直せた

のに。言葉の、たった数文字が直せなかった。

「リナさん。それちょっと見せてください」

 ハルカさんが後ろから覗き込んでいた。

 私は少し身構えた。この人に、この設計の

何が分かるんだろう。——たぶん、そう思っ

た。恥ずかしい話だ。VPOKEを教わって

おいて。教わる側になるのは悪くない、なん

て思っておいて。肝心なところで、私はまだ

この人をどこかで見くびっていた。

 ハルカさんは私の書いた文をしばらく読ん

で、それから一箇所だけ直した。

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