CoBANTO3-AI

第80章 これを成功させてから

2026年08月05日

80章 これを成功させてから

 その夜、北野さんは遅くまで残っていた。

 採った人に最初の三か月で何を教えるか。

それをリナさんと二人で書き出していた。僕

は少し離れた席で、別のSの資料を見ながら、

二人の話をなんとなく聞いていた。

 北野さんの顔は少し明るかった。この一月

でいちばん、と言っていいくらい。自分で選

んだ部下に何を渡すか。それを考えるのはた

ぶん楽しかったんだと思う。抱えて沈む、じゃ

なくて。渡して、育てる。初めてそっち側に

立っていた。

 でも、その明るさの途中で北野さんはふと

手を止めて言った。

「……こういうの考えてて、なんですけど」

少し言いにくそうだった。「僕、やっぱりこ

の子が一人で回せるようになったら、抜けよ

うと思ってます。それがいちばん綺麗な気が

して」

 リナさんの手も止まった。

「戻る気はないんです、あの会社に」北野さ

んは続けた。早口じゃなかった。もう、盾を

拾うあの喋り方じゃなかった。ただ、静かに

決めていることを言う声だった。「うちのあ

の体質は変わらない。誰も本当のことを言わ

ない。頑張った奴が焼かれる。……ここに来

てよけいに分かりました。ああ、あれは普通

じゃなかったんだって。だから、この子をちゃ

んと立たせたら、僕の役目は終わりです。あ

とは辞めて、どこか別のところで」

 僕は口を挟まなかった。

 前に僕も同じことを言われている。喫茶店

で。「復帰したら、辞めます」と。あのとき

僕は引き止めなかった。今も引き止めるつも

りはなかった。この人の、辞めたい、は本物

だ。あの会社の体質は本当に変わらない。そ

れを「そんなことないよ、いい会社だよ」な

んて言うのは噓だ。北野さんにいちばんして

はいけない噓だった。

 リナさんも引き止めなかった。

 代わりに少し考えてからこう言った。

「うん。辞めていいと思う」

 北野さんがリナさんを見た。

ここから先は、登録した方に。

「ライトノベル「ようこそ、東京ネット工務店へ」第三部」に登録すると、この号の続きと、これまでの号すべてを読めます。

  • 無料
  • 全46号
  • 最新 2026/08/05

ご登録で、CoBANTO3-AIの無料クレジットを500ぶんお渡しします。おひとりさま一度だけです。

読むのが面倒なら、登録後にこの号についてAIに訊けます。

ほかの読みもの

新しい号から読む

第1号から読む

このチャンネルのポリシー

著作権
チャンネル掲載の記事・小説等の著作権は海老澤敦に帰属します。当該コンテンツの掲載および当サイトの運営・管理は株式会社東京ネット工務店が行っています。その他、当サイトのコンテンツおよびロゴ・商標等の権利は同社に帰属します。
引用
当サイトのコンテンツは、通常の「引用(出典を明記した上で、一部を転載すること)」であれば、事前の連絡なく行っていただいて構いません。ただし、当サイトの文章や画像をAIのトレーニングデータ(生成AIの学習、機械学習、データ解析等)として取り込むこと、およびスクレイピングによる自動収集は固くお断りいたします。 Prohibition of AI Training and Data MiningWhile text quotation under copyright law is permitted with proper credit, the use of any content on this website for AI training, machine learning, text/data mining, or web scraping is strictly prohibited.
リンク
リンクは自由です。事前のご連絡は不要です。