OpenAIは2023年11月、ChatGPTの「GPT」を公開しました。発表文には「誰でも簡単に自分だけの GPT を作ることができます。コーディングは一切必要ありません」とあります。そのカスタムGPTが、2026年12月11日に廃止されます。移行先の「プラグイン」に引き継がれるのは指示文と資料で、外部のサービスとつないだ設定は引き継がれません。
① 事実
OpenAIは、ChatGPTのカスタムGPTを廃止し、「プラグイン」という仕組みに移すと公表しました。ヘルプセンターに、廃止の日付と移行の手順をまとめたFAQがあります。何が移り、何が移らないか、誰が移せるかが書かれています。
OpenAIは2023年11月、「コーディングは一切必要ありません」とカスタムGPTを出しました
OpenAIが2023年11月6日に公開した発表文です。カスタムGPT(指示文と参考資料と機能を組み合わせて作る、目的別のChatGPT)について、こう書いています。「誰でも簡単に自分だけの GPT を作ることができます。コーディングは一切必要ありません。社内使用や一般公開用のものを独自で作成することができます」。
いま同じページを開くと、冒頭に「現在の機能については、Workspace agents と ChatGPT Work を見てください」という趣旨の案内が添えられています。
カスタムGPTは、ChatGPTの画面で、会話と入力欄だけで作れました
作り方は、ChatGPTの画面で「GPTを作成」を開くところから始まります。作りたいものを会話で伝えるか、設定の画面で、名前と説明と指示文(そのGPTにどう振る舞わせるかの文章)を書きます。
そのうえで、読ませたい資料のファイルを上げ、ウェブ検索や画像の生成といった使える機能を選びます。外部のサービスを呼び出したいときは、「アクション」の欄に、そのサービスの呼び出し方と認証の情報を設定します。最後に、自分だけで使うか、リンクを知っている人に共有するか、公開するかを選んで保存します。
アクションの欄を除けば、コードを書く場面はありません。
2024年1月には、作ったGPTを並べる「GPTストア」が開きました
OpenAIは2024年1月10日、GPTストアを公開しました。利用者が作ったカスタムGPTを公開して、他の人が探して使えるようにする場所です。発表文には、GPTの発表から2か月で「既に300万を超えるカスタムChatGPTが作成されています」とあり、作った人がGPTの利用に応じて収益を得られる仕組みも示されていました。
12月11日に廃止、移行先は「プラグイン」です
FAQによると、カスタムGPTは<strong>2026年12月11日</strong>に廃止されます。対象はChatGPTのすべてのプランです。承認を受けた一部の企業向け契約(Enterprise)のワークスペースだけ、2027年2月11日まで延びます。
廃止日を過ぎると、カスタムGPTとそのページにはアクセスできなくなります。それまでは、いまあるGPTを使い続けられます。
移行先の「プラグイン」は、繰り返し使う指示、参考資料、接続したアプリをまとめて扱う仕組みだと説明されています。
指示文と資料は移ります。外部とつないだ設定は移りません
移行すると、GPTの指示文はプラグインの中の「スキル」になり、ナレッジファイル(GPTに読ませていた資料)は参考資料としてコピーされます。接続していたアプリも、プラグインに加わります。
移らないものも、FAQに並んでいます。
カスタムアクション(GPTから外部のサービスを呼び出すために、利用者が自分で設定した連携)は、移行の手順では引き継がれません。FAQは、つなぎ直すには独自のMCPサーバー(AIと外部のサービスをつなぐための共通の仕組みを、自社で動かすもの)と技術的な設定が要る場合がある、としています。作り直した連携が元の機能をすべて備えているとは限らない、とも書いています。
ほかに、これまでの会話の履歴、GPTに選んでいたモデル、共有の設定も移りません。移行されるのは公開済みの最新版だけで、下書きや公開前の編集は移りません。
移せるのは、作った人です
FAQによると、移行できるのはカスタムGPTを作った人です。Enterpriseでは、ワークスペースの管理者も移行できます。他の人が作ったカスタムGPTを、GPTストアや共有のリンクから使っているだけの人は、移行できません。
移行したプラグインは、非公開の状態から始まります。それまでGPTを使っていた人が、自動で使えるようになるわけではありません。移行した後の元のGPTは読み取り専用になり、作った人も削除できなくなります。
作った人がすでに社内にいない場合にどうなるかは、FAQには書かれていません。
出典:
- OpenAI Help Center「Custom GPT retirement and migration FAQ」 https://help.openai.com/en/articles/20001519-custom-gpt-retirement-and-migration-faq
- OpenAI「GPT のご紹介」(2023年11月6日) https://openai.com/index/introducing-gpts/
- OpenAI「GPT ストアのご紹介」(2024年1月10日) https://openai.com/index/introducing-the-gpt-store/
② 構造
カスタムGPTの廃止で作り直しが要るのは、外部のサービスとつないだ部分です。画面で書いた指示文と、上げた資料は移ります。カスタムGPTは、コードを書かずに作れることを入口にしていました。3年のあいだに、AIを業務に組み込むやり方そのものが変わりました。
作り直しになるのは、外部のサービスとつないだ部分です
カスタムGPTを作るときに画面で書いた指示文と、上げた資料は、プラグインへ移ります。移らないのは、「アクション」の欄で外部のサービスとつないだ部分です。
指示文と資料だけのカスタムGPTなら、移行の手間は小さく済みます。受発注の仕組みや顧客の台帳をアクションでつないで、業務の流れに組み込んだカスタムGPTほど、作り直す部分が大きくなります。深く使った会社ほど、移行の負担が重くなると読めます。
3年で、AIを業務に組み込むやり方が変わりました
AIを組み込んだワークフロー(仕事の手順の流れ)の作り方は、2023年当時と現在とで、まったく異なる手法になっています。2023年の発表文は、コーディングが要らないことを入口にしていました。移行先では、外部とつなぎ直すのに、MCPサーバーと技術的な設定が要る場合があります。
モデルを作っているOpenAIでさえ、この流れを読めていなかった、と見ています。
本紙は、フロンティアのAI企業が、出したものを引っ込めることを繰り返している、と読んできました。これまではモデルの話でした。今回は、利用者が自分でAIを作る入口そのものが、3年で入れ替わります。